【マニラ=中村亮】自民党の茂木敏充幹事長は2日、マニラでフィリピンのマルコス大統領と会談した。南シナ海問題やインフラ整備を話し合った。日本の閣僚や与党幹部らの訪問が相次いでおり、中国対処に向けたフィリピン重視の姿勢が鮮明になる。
両氏は中国が南シナ海などで一方的な現状変更に向けた取り組みを強めているとの認識で一致した。中国が貿易規制などで他国に圧力をかけて外交政策で譲歩を迫る「経済的威圧」に双方が懸念を示した。茂木氏が記者団に明らかにした。
日本からは上川陽子外相と木原稔防衛相が7月上旬にフィリピンを訪れたばかりだ。外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を開いた。自衛隊とフィリピン軍の相互往来をしやすくする「円滑化協定」に署名した。
自民党の小野寺五典元防衛相が率いる議員団も6月下旬にフィリピンへ出張した。同国の防空レーダー施設やスービック海軍基地を訪れ、マナロ外相らに会った。
相次ぐフィリピン訪問は中国による南シナ海の実効支配に危機感が高まる現状を映す。
中国はアユンギン礁周辺でフィリピン船の活動を繰り返し妨害している。オランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年に下した判決に沿わない行動で国際ルールから逸脱する。双方は対話を探るものの、偶発的な衝突のリスクは残る。
南シナ海は日本にとって中東からの原油を運ぶ海上交通路(シーレーン)にあたる。中国が南シナ海の実効支配を進めるほど日本にとってエネルギーの確保に支障を及ぼすリスクが増す公算が大きい。
11月の米大統領選も日本とフィリピンの接近の背後にある。
マルコス氏は7月30日、マニラで開いたブリンケン米国務長官らとの会談で「とても興味深い米国の政治情勢を考えると来てくれたことに少し驚いている」と話した。米大統領選の行方に気をもむマルコス氏の心証がうかがえる。
米民主党のバイデン大統領は7月21日に大統領候補への指名を辞退すると決め、国内外に衝撃が走っていた。
共和党のトランプ前大統領が勝利すれば東南アジアへの関与が弱まる可能性がある。トランプ氏は大統領在任中に東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の国際会議を欠席するケースが多く、東南アジアを軽視しているとの見方が広がった。
米国の内向き志向が強まれば、フィリピンにとって日本の重要性が増す。マルコス氏は茂木氏との会談で「2国間の関係はかつてなく強固だ」と断言した。一方で「取り組むべきかなり多くのことが残っている」と話し、さらなる協力に意欲を示した。
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