人事院は2024年度の一般職の国家公務員の待遇に関する勧告を国会と内閣に近く提出する。3年連続で給与の引き上げを勧告する見通しだ。若手を中心に官僚離れが進む状況に歯止めをかける狙いがある。今回の人事院勧告のポイントをまとめた。

・人事院勧告とは?
・月給・ボーナスは上がる?
・制度面での改善は

(1)人事院勧告とは? 公務員・民間の給与比較、官民の差埋める

国家公務員は職務の公共性の観点から、使用者に対してストライキができる争議権などの労働基本権が制約されている。第三者機関である人事院が例年、8月に給与や勤務条件に関し国会と内閣に勧告する。

人事院は民間企業に勤める従業員の4月時点の給与水準を調査し、国家公務員の水準と比較する。24年度は4〜6月に従業員50人以上の企業から抽出したおよそ1万2000事業所を対象に、給与やボーナスの水準を調べた。

調査に基づき、民間のほうが高ければ公務員給与を上げ、逆に低ければ公務員給与を下げるよう勧告する。政府は勧告を受け、給与関係閣僚会議を開いて勧告を受け入れるか協議する。受け入れる場合は給与法や勤務時間法などの改正案を決定し国会に提出する。

勧告は自衛隊員などの特別職を除く国家公務員の一般職およそ28万人を対象とする。地方公務員およそ280万人の給与も勧告を参考に改定方針が決まる。

(2)どうなる月給・ボーナス? 3年連続引き上げへ、民間で賃上げ進む

24年度は月給を平均2%超増額するよう求める方針だ。物価高を背景に民間企業で賃上げが続いており、賃金格差を埋める。月給の増額は3年連続で、2%を超えて引き上げるのは1992年度以来32年ぶりとなる。

23年度の勧告は月給とボーナス(期末・勤勉手当)について増額を要請し、大卒と高卒の初任給を33年ぶりにともに1万円超増やすことを求めた。

より踏み込んだ賃上げを求める声は多い。人事院の23年度の調査では、公務員の魅力向上や人材確保につながる取り組みとして「給与水準の引き上げ」を挙げた職員はおよそ8割に上った。

(3)制度面での改善は? 配偶者手当を廃止、子ども手当は増額

近年は給与だけでなく職場環境や給与以外の制度面の改善についても勧告することが多い。23年度は既存のフレックスタイム制を拡充した「選択的週休3日制」や在宅勤務手当の導入を盛り込んだ。

24年度は扶養手当を見直す方針だ。共働き世帯の増加や民間企業で手当の廃止が進む状況に対応するため、配偶者手当を廃止する。配偶者分を削減することで子ども手当は増額する。

人事院が給与や待遇面の改善策を打ち出す背景には国家公務員のなり手不足が止まらない現状がある。

24年度の春の国家公務員総合職試験への申込者数は1万3599人で、現行の試験制度になった12年度以降で過去最少となった。離職者も増えている。採用後10年未満で退職した国家公務員は22年度で177人と現行の試験制度下で過去最多だった。

月給を引き上げたり、「ブラック霞が関」と揶揄(やゆ)される環境を改善したりすることで、公務の魅力を向上する狙いがある。

(田中昴)

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