東京電力福島第一原発の処理水放出が始まって1年となる24日、岸田文雄首相は福島県いわき市を訪問し、魚市場を視察した。中国が続ける日本産水産物の全面禁輸措置に対し、記者団に「科学的根拠に基づかず、極めて遺憾なことだ」と述べ、即時撤廃を引き続き求める考えを改めて示した。禁輸で影響を受ける水産事業者への追加の支援策の方向性を月内に示す方針も明らかにした。

 首相はこの日、魚市場の視察で地元で捕れた魚介類を試食して安全性を強調。漁協関係者と意見交換した。

 視察後、首相は記者団に対し、中国の禁輸措置を批判しつつ、「科学に基づく専門家同士の対話を進め、正しい理解につなげる取り組みも行いたい」と強調。水産物の対中国輸出量の半分ほどは代替販路を開拓できたとしたが、「完全に置き換えるには至っていない」と指摘。追加の支援対策を検討するため、近く関係閣僚会議を開く方針を示した。一方、原発事故で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を取り出す作業が手順ミスで中断したことについては、「重く受け止めている。引き続き国が前面に立ち、安全かつ着実な廃炉に取り組む」と語った。

 首相は同日、同じいわき市内で開催された自民党の政治刷新車座対話にも参加。政治刷新車座対話は派閥の裏金事件を受けて3月から始まったもので、この日の対話で全47都道府県での開催を終えた。(宮脇稜平)

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