自民党の河野太郎デジタル担当相(61)は26日、国会内で記者会見を開き、9月の党総裁選に出馬する意向を正式に表明した。会見での詳しいやりとりは以下の通り。(佐藤裕介、長崎高大、宮尾幹成)

自民党総裁選への出馬を表明する河野太郎デジタル担当相=国会内で(佐藤哲紀撮影)

◆裏金「不記載額の返還でけじめとする」

━信頼を取り戻すための党改革の一環として、派閥の政治資金裏金問題で(政治資金収支報告書の)不記載額の返納を求めるという表明があった。第一歩として、不記載額の返納を選んだ理由は。 「(裏金問題の)真相究明ができたというふうには思えない。ただ、捜査権を持っている検察が調べて分からないものを、どう真相究明をするのかというのは難しいものなのかなと思うが、不記載との指摘を受けて書類を直したらそれで終わりというのは、なかなか国民から理解を(得る)というのは難しいだろう。それならば、不記載と同じ金額を返還をしていただくことでけじめとする、というのがよろしいのではないかと思う」

◆原子力を含め「あらゆる技術に張っておかなければ」

━原子力政策について。原発の新増設やリプレース(建て替え)を推進するのか。現在の核燃料サイクル政策を継続するのか。 「最近のデータセンター、生成AIをはじめとする電力需要の急速な伸びで、これから電力需要は反転して増えてしまう。そうすると、再生可能エネルギーを今の2倍のペースで入れたとしてもまったく足らない。原子炉で再稼働できるものは再稼働しても、おそらく4000億kW時ぐらいは足らなくなってくる。そうすると、電力の供給が追いつかないからデータセンターを日本からシンガポールへ移そうとか、経済にも影響が出てしまうから、電力の供給を最大限にするために、あらゆる技術に張っておかなければいけない」 「余剰のプルトニウムを持ち続けるというわけにもいきませんし、(使用済み核燃料の)最終処分地をどうするかというのがまだ決まらない中で、日本としてできることは一生懸命何でもやっていくという必要が当面はあるんではないか」

 核燃料サイクル 使用済み核燃料を再処理してプルトニウムと燃え残りのウランを取り出し、核燃料として再利用する構想。プルトニウムを燃料に用いる高速増殖炉計画は頓挫しており、通常の原発(軽水炉)でプルトニウムを燃やすプルサーマル発電も進んでいないため、大量の余剰プルトニウムの存在が国際的に批判されている。河野氏はこれまで、核燃料サイクルには経済合理性がないなどとして、見直しを強く主張してきた。

━先に出馬表明した石破茂元幹事長は「原発ゼロに近づける努力を最大限にする」と踏み込んだ。 「エネルギー政策は、データセンターとAIの需要、これで電力需要がかなり跳ね上がる。今の時点では、残念ながらこの再生可能エネルギーを倍のスピードで入れて、(再稼働が)可能な原子炉を再稼働してもまだ需要予測に至りませんので、そこは全方向に日本として張っておく必要がある。だんだん優先順位というものが見えてくるんだろうというふうに思います。(菅政権時代に打ち出した)『2050年カーボンニュートラル』ということを考えると、特に今年の夏の天気を考えると、やはり化石燃料からの脱却というのは、これはやはり日本というか世界が避けて通れない状況だと思いますので、まずはそこをしっかりやっていかなければいけないのかなと思います」

記者会見する河野太郎氏=国会内で(佐藤哲紀撮影)

◆マイナカード普及「見込みよりうまくいった」

━デジタル担当相としての取り組みをご自身でどう評価するか。 「マイナンバーカードの普及であったり、あるいはスマートフォンへのマイナンバーカードの機能の搭載であったり、かなり当初見込みよりもうまくいったのではないかというふうに自負している」 「デジタル化というのは、もう世界というか社会の中のあらゆるところで必要となってくるので、デジタル庁、デジタル大臣、そこの部分をしっかり技術面から支えてもらう。総理として、このデジタル技術を生かしながら、日本の社会、人口が減少し、一部過疎化が進む中で、いかにぬくもりのある温かい社会を作っていくか、その総合的な指揮をとっていきたい」 ━首相になった場合の解散総選挙の戦略は。 「解散する場合に申し上げたい。今の時点で私の将来自分の手を縛ることは避けたい」 ━菅義偉前首相の支援を受けずに総裁選に挑むことへの受け止めは。小泉進次郎元環境相の待望論への認識を。 「総裁選は毎回違う状況で行われる。ここまでいろんな話を(菅氏、小泉氏の)2人ともしてきているが、今回はこういうやり方になったということ。総裁選はいろんな議論をした上で、終われば自由民主党としてまたワンチームで政権を担っていくわけなので、総裁選の最中は積極的に議論していきたい」

◆「派閥は人事に携わらない、みんなで確認を」

━皇位継承のあり方について、以前は女系天皇も含めて検討を考えるべきといった発言をされているが、現在の考えは。 「日本の皇室の男系というものが長く、非常に大事で、続けられるなら続けられるようにしたいというふうに思っていたが、今、自民党の所見、こうしたものに基づいて両院議長のもと、議論が行われているので、そこについては静謐に、この所見に基づいて議論を進めていくべきだと思っている」 ━派閥のあり方について。解散を表明した派閥のうち実際に総務省に届け出たのは現時点で森山派のみ。こうした現状についてどのように考えられるか。自民党全体として派閥は解散すべきとしたこの方向性は妥当だと考えるか。総裁になった場合、どのように派閥と向き合うか。 「派閥の弊害はカネと人事なのではないかと思っている。カネについては、派閥のパーティーはやらないということになり、この問題はなくなってきた。人事についても自民党のガバナンスコードで、派閥による人事はやらないということになっている。派閥が人事に携わらないというガバナンスコードがきちんと守られるというところを、みんなで確認をするというのが大事なのではないか」

記者会見を終えて会見場を出る河野太郎氏=国会内で(佐藤哲紀撮影)

◆選択的夫婦別姓は「認めた方がいい」

━選択的夫婦別姓について。 「私は認めた方がいいと思っている」 ━失われた30年と言われる経済の停滞、国際競争力の低下がなぜ続いてきたと分析しているか。政治の力で、どのように民間主導の経済成長を実現するのか。岸田政権の経済政策をどのように評価しているか。 「日本の賃金が上がらなかった。労働市場改革が遅れてしまったのではないか。もっと躍動感が出る労働市場というものを作ってこなければいけなかったのではないか」 「もう一つは、労働力不足の中で、控除、手当、年収の壁というのがあった。そういう制度の仕組みを変えていく。仕組みを改めていく必要がある。岸田内閣はデフレ脱却というところまで来た。物価上昇が賃金上昇を上回ってしまったというところはあったが、ここへ来てGDPもプラス成長になり、賃金が上回ってくるというような状況になってきたところはある」

◆Xでのブロック「誹謗中傷は止めないと」

━X(旧Twitter)で一般人をブロックするなどの指摘があった。総理の資質としてふさわしいのか。 「いつの頃か、SNSでの誹謗中傷というのが非常に増えてきてしまった。何らかの形で誹謗中傷を止めなきゃいけない」 「一つは法的な手段に訴えるということもあるのかもしれないし、もう一つ簡単にできるのは、誹謗中傷する人をブロックするということ。誹謗中傷をする人をブロックしている人に対して『ブロックするのはけしからん』みたいなことをやると、本来、誹謗中傷されている人がブロックしてしまえばその誹謗中傷を見なくて済むのに、ブロックしたと言って批判されるからと怖がりブロックをしなくなるというのは、大きな問題ではないかと思っている」 

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