自民党は2日、憲法改正実現本部の会合を党本部で開き、憲法に「9条の2」を新設して自衛隊を明記することなどを柱とした改憲の論点整理を全会一致で承認した。退陣を決めている岸田文雄首相(党総裁)は、改憲について「理想を戦わせる段階はもう終わった。議論を振り出しに戻してはならない」と述べ、次の総裁も論点整理の内容を引き継ぐよう求めた。

◆「自衛隊」明記や「緊急政令」規定

2日、自民党の憲法改正実現本部の会合であいさつする岸田首相。左は古屋圭司本部長(池田まみ撮影)

 論点整理では、自衛隊を9条の2に位置付ける従来の方針を「基本的に堅持すべきだ」とした。党は2018年にまとめた条文案で9条の1項、2項は維持した上で9条の2を新設するとしていた。条文の文言は引き続き議論する。  シビリアンコントロール(文民統制)の規定に関しては公明党の主張に配慮。内閣の職務などを定めた72条や73条への記載の可能性を排除しないとした。  緊急事態の発生時に内閣が法律に代わって「緊急政令」を出せるようにするため、根拠規定を憲法に定めることも確認した。党内には緊急事態時の議員任期延長の改憲を優先すべきだとの意見があり、同時に進めるかは引き続き議論する。

◆「越権行為と思う候補はいるかも」

 論点整理は、首相が総裁選不出馬を表明する直前、8月7日の会合で指示していた。退陣する総裁が今後の議論の方向性を規定する形になり「越権行為と思う総裁候補はいるかもしれない」(中堅)との指摘もある。一方、改憲は自民党の党是で、総裁選の争点の一つとなる見通しだ。  総裁選への立候補を表明している石破茂元幹事長は記者団に対し、論点整理の内容に「賛成する」と述べたが、持論の「9条2項削除」は引き続き主張するとした。(井上峻輔) 

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