自民党の保守系議員連盟は4日の会合で、男女の「身体的な特徴」で公衆浴場などの利用を区別することを義務化した議員立法の法案要綱を了承した。多様なジェンダーを法律で規制することは、性的少数者(LGBTQ)への理解増進法が理念に掲げる「不当な差別の禁止」との整合性が問われそうだ。党総裁選で争点化するよう各候補者に求め、次期衆院選の公約への反映を狙う。

◆総裁選での争点化を求める保守系議連

 議連は「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」。昨年6月に成立した理解増進法に慎重・反対の立場だった保守系議員ら100人超が参加しており、性自認が出生時と異なるトランスジェンダーを念頭に、男性が自認する性を偽って女性用の施設に侵入しかねないと主張してきた。

自民党の議連会合であいさつする共同代表の片山さつき元地方創生担当相(左)と山谷えり子元国家公安委員長=4日、自民党本部で

 法案要綱では、公衆浴場や旅館・ホテルの共同浴室の利用は身体的特徴で男女を区別することを義務化し、公共トイレなども設備上の対策や巡回を管理者の努力義務とした。  議連の片山さつき共同代表は会合で、「私たちは女性の安心・安全を1ミリたりとも損ねない。自民党が保守政党である前提で総裁選をやるなら、この話は(論戦に)かけてほしい」と強調。会合後、次期衆院選の公約作成に当たり「きちんと踏まえてほしい」と記者団に語った。

◆「問題なのはトランス女性と偽って性犯罪をする男性だ」

 追手門学院大の三成美保教授(ジェンダー法学)は「女性の安全を守るとして法制化するのは、トランス女性は潜在的な性犯罪者であるという偏見を助長する。性的少数者の人権保障を進める国際的な動向に逆行する」と指摘した。  駒沢大の松信ひろみ教授(家族社会学・ジェンダー論)は「多くのトランス当事者は性別移行の状況に応じてトイレなどを慎重に利用している。問題なのはトランス女性と偽って性犯罪をする男性だ」と批判する。  理解増進法は性の多様性への理解を深めるための基本計画策定を政府に義務付けたが、岸田政権は作成していない。(近藤統義) 

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