SNS用の動画を収録する小泉進次郎氏=8月30日、都内で(佐藤哲紀撮影)

自民党の小泉進次郎元環境相(43)=衆院神奈川11区、5期=は6日午前11時から記者会見を開き、党総裁選(9月12日告示、27日投開票)への立候補を表明する。 高い知名度と発信力で「本命候補」の一人と目されている一方、党三役や主要閣僚を務めたことはなく、党内には経験不足を指摘する声もある小泉氏。個性的な言い回しの発言がしばしば「進次郎構文」などと揶揄(やゆされてきた経緯から、国会審議や記者会見での答弁能力にも懸念がくすぶる。(佐藤裕介)

◆「小泉氏が決選投票に進む可能性高い」

各種世論調査の「首相になってほしい政治家」のランキングでは、既に出馬表明している石破茂元幹事長(67)と首位を争うことが多い小泉氏。 総裁選で林芳正官房長官(63)を支援する旧岸田派中堅は「押しも押されもしない有力候補だろう。彼の刷新感と発信力は抜群だ」と高く評価。小泉氏が「決選投票に進む可能性は高い」とみる。

高い政権支持率を誇った父の小泉純一郎氏。自民党三役や重要閣僚を経験せずに首相に登り詰めた

総裁選に名乗りを上げた候補者の中では小泉氏に次ぐ若さの小林鷹之前経済安全保障担当相(49)を推す安倍派若手も「知名度で小泉氏と正面から渡り合っていくのは厳しい」と話し、「いかに(決選投票に進める)2位に食い込むか」が他陣営の目標になっていると指摘する。 小林氏を支える別の安倍派若手は「マスコミ報道のせいで『進次郎優勢』が既成事実のようになってしまっている」と危機感を示す。

◆気候変動に「セクシーに取り組む」

高い政権支持率を誇った父・小泉純一郎元首相(82)の地盤を受け継いで2012年の衆院選で初当選し、「将来の首相候補」として早くから注目されてきた進次郎氏だが、その発言はたびたび物議を醸してきた。 2019年に環境相に就任した直後、米ニューヨークの国連本部で開かれた気候行動サミットに出席した後の記者会見では、「気候変動のような大きな問題はセクシーに取り組むべきだ」などと発言。「意味が分からない」などと批判を浴びた。

環境相時代の小泉進次郎氏

環境相として訪れた福島県で、東京電力福島第1原発事故による汚染土の最終処分場について問われ、「30年後の自分は何歳か、発災直後から考えていた。健康でいられたら(県民との)その30年後の約束を守れるかどうかの節目を見届けることができる政治家だと思う」と答えたのは、「珍答弁」として語り継がれている。ネット上には「小泉構文」「進次郎構文」といった言葉も飛び交っている。 仮に首相に就任すれば、国会の予算委員会などで野党の厳しい質問に答えなければならない。小泉氏の答弁能力を巡っては、「1人で政権運営をやるわけではない。周りが支えれば大丈夫」(旧岸田派中堅)と擁護する声がある一方、「立憲民主党の新代表がベテランの野田佳彦氏になったら、予算委員会でコテンパンにやられる。全く太刀打ちできないだろう」(安倍派若手)と危惧する向きもある。

◆入閣は環境相のみ、党三役も未経験

自民党の歴代の首相経験者は、総裁就任前に党三役(幹事長、政調会長、総務会長)や、官房長官、外相、財務相などの主要閣僚を複数回経験しているケースが多い。 田中角栄元首相は「首相の条件」として、「党三役のうち幹事長を含む二つと、蔵相(現・財務相)、通商産業相(現・経済産業相)、外相のうち二つを経験していること」を挙げたとされる。もっとも、この条件を満たして首相になった例は、平成以降では橋本龍太郎氏しかいない。また、近年は官房長官も首相の登竜門と見なされている。

橋本龍太郎氏。首相就任前に自民党幹事長、政調会長と大蔵相、通商産業相を経験している

小泉氏は党三役入りしたことはなく、閣僚経験も環境相の1回にとどまる。安倍派の閣僚経験者は「政治経験が少なく、『軽量級』というのはその通りだ」と話す。 首相になれば外国の首脳との会談もこなさなければならない。安倍派若手は「彼が米国の大統領になるかも知れないトランプ氏や、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席とやりあう姿が全く想像できない」と不安視する。 

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