12月2日に迫る現行の健康保険証の新規発行廃止を巡り、自民党総裁選(12日告示、27日投開票)の立候補予定者たちから発言が相次いでいる。 岸田政権のナンバー2、林芳正官房長官が廃止時期の見直し検討に言及したことをきっかけに、マイナンバカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」への移行のあり方が争点に浮上した。(デジタル編集部)

自民党総裁選への立候補を表明し、記者会見する加藤勝信元官房長官=衆院第2議員会館で(佐藤哲紀撮影)

10日には、前厚生労働相の加藤勝信・元官房長官が立候補表明会見で「スケジュールはしっかり守っていくべきだ。DX化に向けて社会を進めていく努力を止めては絶対にならない」と述べた。

◆「DXを進めていけなければ対応できない」

加藤氏は、現行の保険証廃止時期を決めた当時の厚労相だ。 会見では、記者からの質問に対し「コロナ禍の対応を考えたときに、日本の医療、日本の社会のDXを本当に進めていかなければ対応できないという強い思いがあった」と当時の心境を振り返った。 マイナ保険証の一本化に対する懸念には、マイナカードと一緒に使うことで保険診療を受けられる「資格情報のお知らせ(通知書)」などで対応する考えを述べた。

◆林氏は「不安にしっかり応え、納得してもらう」

先に総裁選への立候補を表明した林芳正氏は7日、マイナ保険証について「不安の声があるので、それを払拭して、皆さん納得の上でスムーズに移行してもらうための必要な検討をしたい」と述べた。現行保険証の廃止時期の見直しを考えているのか問われると、「不安の声をたくさん、いろんなとこから聞いているので、そういうことを含めて検討したい」と述べた。

記者会見する林官房長官=9月9日、首相官邸で(佐藤哲紀撮影)

9日の官房長官会見では、「政府としては現行の健康保険証の新規発行を12月2日に廃止し、マイナ保険証を基本とする仕組みへ移行することとしている」と政府の立場を説明した上で、見直しに言及した自らの発言については総裁選に立候補する立場としての考えだと使い分けた。 マイナ保険証への一本化を主導してきた河野太郎デジタル相は「林氏も閣内で政策を推し進めてきた1人。発言の真意を確認しなければならない」と述べた。 共同通信によると、他の総裁選の立候補予定者では、石破茂元幹事長が8日、記者団に「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば、併用も選択肢として当然だ」と語った。 小林鷹之前経済安全保障担当相は9日、記者団に「現時点で(廃止)時期をさらに延ばしていくことは考えていない」と述べた。

◆「総裁選だけは立憲民主党化?」と皮肉も

東京新聞などの地方紙18紙が8月に実施した合同アンケートでは、回答した1万2007人の多くが現行の保険証を残すことを希望した。保険証廃止を支持したのは2割に留まった。 マイナ保険証を使うという人でも、半数近くが現行の保険証との選択制を希望した。自由記述では、高齢の家族が使えないことや、マイナ保険証の読み取り機のトラブルなどへの心配の声が多く寄せられた。 総裁選でにわかに浮上した保険証廃止時期の見直し論に対し、会員制サイト「X(旧Twitter)」では、「どうして総裁選にならないと言えないの?」「なんで、今まで言わなかったのか」「国民の声は聞こえてるくせに、選挙がなければ死んだふり」などと冷ややかに指摘する投稿が相次いだ。 立憲民主党の泉健太代表は、自身のXアカウントで「自民党総裁候補、総裁選期間中だけは立憲民主党化?」と皮肉まじりに指摘。防衛増税ゼロ、選択的夫婦別姓の実現、政策活動費の廃止と並べて、「自民党は、これらに反対ばかりでした。全くのご都合主義」と批判した。

◆保険証廃止後も最長1年は有効

厚生労働省によると、発行済みの現行の健康保険証は12月2日以降も最長1年間(2025年12月1日まで)使える。 1年が過ぎたり、券面に書かれた有効期限がきたりして保険証が使えなくなった後は、マイナ保険証を持たない人には保険証代わりになる「資格確認書」が渡される。マイナ保険証を持っている人は、10月にも始まるマイナ保険証の利用登録の解除をすれば、資格確認書での受診を選ぶことができる。 マイナ保険証を使う人には「資格情報のお知らせ(通知書)」が渡される。顔認証の読み取り機の故障など、マイナ保険証が使えないときは、お知らせを見せることで保険診療が受けられる。 

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