自民党は岸田文雄首相(自民党総裁)の後継を決める党総裁選を12日午前、告示した。2008年、12年の総裁選の5人を上回り、過去最多の9人が立候補した。選挙期間は15日間と今の規程を導入した1995年以降で最も長く、経済政策や党改革などをめぐり論戦を交わす。27日に投開票する。
総裁選後に召集する見通しの臨時国会の首相指名選挙で新首相を選ぶ。
届け出順で高市早苗経済安全保障相、小林鷹之前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎元環境相、上川陽子外相、加藤勝信元官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長、茂木敏充幹事長が出馬した。
9候補の陣営は党所属の国会議員20人の推薦人名簿など立候補に必要な書類を提出した。同日午後に党本部で所見を発表し、13日に共同記者会見を予定する。
小泉氏は12日午前、都内で記者団に「1年で3つの改革を断行したい。誰もが生きやすい、働きやすい社会をつくりたい」と述べた。
高市氏は「まっさらな気持ちでひたすらに、たくさんの仲間と戦っていく」と話し、経済政策を訴えると強調した。茂木氏は「増税ゼロで政策をしっかりと進める」と意気込んだ。
河野氏は「しっかり改革を続けて日本を前に進めていきたい」と語った。小林氏は「日本のかたちを見据えて全力で戦い抜きたい」と強調した。林氏は「実感できる経済再生の筋道を描く論戦にできたらと思う」と指摘した。
上川氏は「大変密度の濃い時間になる。しっかりと責任を果たしていきたい」と述べた。石破氏は支援議員らとの出陣式で「国民全てが安心して幸せな暮らしを営める日本を私は必ず作る」と力を込めた。
総裁選では党所属の国会議員が1人1票を持つ「国会議員票」と、同数の「党員・党友票」がある。衆参議長などを除く国会議員367票と、それと同数の党員票の計734票で争う。党員票は全国の得票数を「ドント方式」で各候補に配分する。
1回目の投票で1位となった候補が有効投票の過半数に届かなければ、上位2人の決選投票になる。今回は候補者が乱立しており、決選投票にもつれ込む公算が大きい。
決選投票は国会議員票が367票と変わらないものの、党員票は各都道府県連がそれぞれ1票を持つ計47票となる。国会議員票の重みが増す。県連ごとに1回目の党員票を集計し、決選投票に進んだ2人のうち得票が多い候補がその1票を獲得する。
自民党は政策論争を通じ、党派閥の政治資金問題で低迷する党勢の回復を目指す。経済政策や党改革が主なテーマになる見通しだ。
福島県や愛媛県、沖縄県など全国8カ所を回って演説会や討論会を開き、有権者に接する機会を増やす。全国遊説は新型コロナウイルス禍前の18年以来、6年ぶりとなる。この時は4カ所を回った。
岸田首相は10日の党役員会で総裁選を巡り「国民の皆さんの政治への共感を何よりも大切に活発な論戦を期待している」と発言した。
カネのかからない選挙も目指す。選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)は告示前から自動音声の電話(オートコール)やインターネットの有料広告を禁止した。8月下旬、全所属議員に宛てた文書で「多額の費用をかける運動は許されないという認識を全党員が共有すべきだ」とした。
代わりにSNSでの情報発信を充実させる候補が目立つ。7月の東京都知事選で前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏がSNSを駆使して無党派の人気を集めたことも影響している。
今回は麻生派を除く5派閥の解散が決まってから初めての総裁選となる。派閥単位で行動せず、個人の裁量が増したため票読みが難しくなっている。
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