立憲民主党代表選の候補者討論会を終え、手を取り合う(左から)野田元首相、吉田晴美衆院議員、泉代表、枝野前代表(11日午後、金沢市)=共同

立憲民主党の代表選(23日投開票)で外交・安全保障政策の継続を重視する姿勢が強まっている。立民は集団的自衛権の限定行使を認めた安全保障関連法に「違憲だ」との立場から反対する。自民党政権の方針とは隔たりがあるが、政権交代には政策の継続性を重視すべきだとの声が党内で広がる。

立民代表選は野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、吉田晴美衆院議員の4氏が立候補した。継続性を重視する姿勢の背景には、前身の民主党が政権を担った際に、外交・安保分野の政策転換が日米関係などを混迷させたとの反省がある。

民主党政権は2009年に米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の移設について「最低でも県外」を掲げた。その後撤回し、米国との信頼関係に悪影響が及んだ。

今回の代表選は現実を踏まえた発言が目立つ。立民は2022年参院選の公約で普天間基地の名護市辺野古への移設計画を「中止」すると掲げた。中止をめざす姿勢の代表候補者も米国との交渉次第だとの思いをにじませる。

枝野氏は「移設を止めると約束はできないが、できなくても理由を説明できる状況はつくりたい」と言明した。吉田氏は「何ができるか誠実に話し、過程を明らかにし、100%の決着がないかもしれないが、誠実に向き合う」と話した。

首相在任中に辺野古移設を進めようとした野田氏は「米国と話し合うことはできると思う」と語りつつ「今も基本形は変わらない」と言及した。

集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法について、4氏ともに「違憲部分は廃止する」との党の従来の方針を貫く。ただ、政権を取った場合に直ちに法改正することは難しいとの認識だ。

泉氏は10日の討論会で「日米政府で運用がスタートしている。個別的自衛権の範囲で米軍とどのような国防ができるか考える」と述べた。

今回の代表選の論点に挙がっていない部分では、敵のミサイル発射拠点をたたく反撃能力を導入する政府方針に反対した。防衛費の増額は容認する立場をとるが、岸田文雄政権の計画は規模ありきだと異を唱えてきた。外交・安保政策の継続性を示しつつ、立民の主張を反映した修正をどこまで打ち出せるか、具体的な道筋の議論が必要になる。

立民代表選「自民に代わる覚悟を」 笹川平和財団・渡部恒雄氏

笹川平和財団の渡部恒雄上席フェロー

立憲民主党は旧民主党政権時代の失敗という大きなマイナスから始まっている。有権者は期待を裏切られたという感覚がある。万年野党に安住するのではなく、自民党に代わって政権を本気で担う覚悟を示すためには様々な分野で現実的な提案が必要だ。

2022年参院選の公約で米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を「中止」すると明記した。多くの有権者は日米同盟が損なわれることを望んでいない。選挙で票を取るためには鳩山由紀夫政権の方針は失敗だったと認め、現実的な沖縄県の負担軽減策を総選挙までに示すべきだ。

防衛費の拡大を所得税の増税で賄う政府方針について反対するのであれば、別の財源を提示したり、防衛費を拡大せずに日本を守るプランを示したりしないと現実味がない。

米大統領選が11月に迫る。結果次第では日本の外交・安保方針も軌道修正を迫られる可能性がある。そういった観点での議論が不可欠だ。

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