自民党総裁選は27日に投開票が行われる。各候補は、安全保障や改憲など多岐にわたる政策をアピールするが、人口減少を加速化させる少子化への対策についての議論は深まっていない。岸田政権が掲げた「若い世代の所得向上」を多くの候補が唱え、負担増ゼロを掲げる候補もいる一方で、肝心の財源をどう確保するかといった具体論には踏み込めていない。

◆「税収増」は安定財源にはならず

 岸田政権が打ち出した「異次元の少子化対策」には、児童手当の拡充や育児休業給付の増額などが盛り込まれ、年約3.6兆円の予算が投じられる。2030年代初頭までに関連予算を倍増する方針も閣議決定した。一方で、財源確保の道筋は示されていない。

2023年12月14日、記者団の質問に応じる岸田文雄首相

 茂木敏充幹事長は、国民負担が生じる子育て支援金の停止を訴え、経済成長による税収増などを財源に充てると主張。ただ、税収増は安定財源とは言えず、他の候補も財源確保策にはほとんど触れなかった。  「『子育て支援』ではない『少子化対策』はあるか」。23日に開かれた党主催の政策討論会では、少子化の反転には子育て世帯への経済支援だけでは不十分との観点から、こんな質問が寄せられた。高市早苗経済安全保障担当相ら多くの候補が答えた「解」は、若年世代の所得増だった。

◆「ラストチャンス」2030年代が迫る

 小泉進次郎元環境相は「正規・非正規(雇用)の賃金格差をなくす」ことが必要とし、石破茂元幹事長は「(望む人が)結婚できる環境」をどう作るかが大事だと強調した。  もっとも残された時間は多くない。政府は、若年人口が急減する30年代に入るまでが少子化傾向を反転するラストチャンスと位置付ける。それなのに議論が低調なのは、「岸田政権が政策パッケージをまとめたので、候補間で政策の差を出しづらかった」(自民関係者)からとみられる。

◆経済低迷…「長期的な視野で」

 立憲民主党の野田佳彦代表は、岸田政権の施策について「妥当性を再検証し、総合的な対案を具体化する」と強調。若者の困窮による非婚化が進まぬよう、介護など人手不足が深刻な職種に就職した場合、奨学金の返済を免除する制度などが必要との考えを示した。  東大の山口慎太郎教授(労働経済学)は「少子化は日本経済の低迷の大きな要因の一つで、長期的な視野に立った政策論議は欠かせない。新総裁は少なくとも、岸田政権で進めた少子化対策をどうするのか、財源をどう考えるのかを示すべきだ」と指摘する。(坂田奈央) 

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