自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、総裁選では「脱派閥」を掲げて争われたが、国会議員票の重みが増す決選投票に向け、旧来の派閥単位で多数派工作を行う動きが相次いだ。最終盤には重鎮詣でや、新政権に影響力を残したい領袖(りょうしゅう)らによる投票指示の情報が飛び交うなど「派閥の論理」が横行して「刷新感」とはほど遠い選挙戦となった。

◆麻生太郎氏は、子飼いの議員に高市早苗氏への投票を指示

自民党の新総裁に選出された石破茂氏(手前)のあいさつを聞く岸田首相(後方前列右)と麻生副総裁(同左)=東京・永田町の党本部で(佐藤哲紀撮影)

 派閥の裏金事件後、自民6派閥のうち5派閥は解散を決めた中で唯一存続して結束を誇る麻生派。所属議員によると、会長の麻生太郎副総裁は、決選投票の際に、高市早苗経済安全保障担当相に投票するよう54人の所属議員に指示したという。決選投票を争った石破茂元幹事長は、麻生政権末期に首相辞任を迫ったことから折り合いが悪かったことなどが背景にある。  岸田文雄首相が率いた旧岸田派でも、決選投票を控え、衆院議員には「1回目の党員投票でトップの候補」、来年夏に参院選を控える参院議員には「石破氏」に投票するよう「派閥幹部から指示があった」と複数の議員が明かした。  首相は総裁選中に「派閥が解消しているわけだから自民党国会議員一人一人が自立した議員としての判断、見識が問われる選挙だ」と語っていた。首相に近い議員ですら「いまだに派閥単位で物事を考えていて、派閥の論理から抜け出せていない」と苦言を呈した。

◆票に目がくらんで完全に開き直った小泉進次郎氏

東京・永田町の自民党本部(資料写真)

 候補も派閥頼みが目立ち、石破氏や小泉進次郎元環境相が、麻生氏や二階俊博元幹事長ら重鎮に相次いで面会して支援を要請。裏金事件で離党したが今も影響力を持つ世耕弘成前参院幹事長に面会し、裏金議員が多い旧安倍派に接近する動きも見られた。小泉氏は「選挙で一人でも多くの方に直接支援をお願いするのは当然」と開き直った。  ベテラン議員は「脱派閥の総裁選と言われているのに、小泉氏が派閥的な動きをするのはマズい」と批判。別の議員も「麻生氏の働き掛けは結局派閥政治に戻ってしまっている。国民のイメージは悪い」と述べた。(川田篤志) 

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