自民党本部に入る石破茂総裁=9月30日午前(佐藤哲紀撮影)

自民党の石破茂総裁は30日、首相に就任した後は早期に衆院解散し、「10月15日公示、27日投開票」の日程で衆院選を行う意向を表明した。党本部で新執行部とともに臨んだ記者会見の冒頭、「新政権はできるだけ早期に国民の審判を受けることが重要と考えており、諸条件が整えば10月27日に解散総選挙を行いたいと考えております」と述べた。 石破氏は10月1日召集の臨時国会冒頭で首相に指名される。首相に就任する前に次期衆院選の日程を示した理由については、各自治体の選挙準備の観点から判断したと説明。「異例のことだが、不適切とは考えていない」と述べた。 石破氏は総裁選で、自らが首相になった場合は国会の予算委員会で与野党の質疑に応じ、政権の考えを国民に説明した後で衆院解散する考えを示していたが、この時期の解散となれば衆院は10月9日にも解散される見通しで、予算委の開催は難しくなる。衆院解散を巡る石破氏の言動は早くも変節した形で、さっそく野党からの反発が出ている。(デジタル編集部)

◆総裁選では「全閣僚出席の予算委を一通りやる」と明言

自民党内では4日に所信表明演説、7~8日に各党代表質問、9日に党首討論を実施した上で衆院を解散する日程が浮上。この日程の場合、衆参の予算委で十分な審議時間を確保するのは厳しい。 石破氏は8月24日に総裁選への立候補を表明した記者会見では、首相に就任した場合の衆院解散の時期について問われ、「全閣僚出席型の予算委員会というものを一通りやって、この政権は何を考えているのか、何を目指そうとしているのかということが、国民の皆さま方に示せたその段階で、可能な限り早く信は問いたい、問うべきだ。私はそのように考えます」と明言していた。

◆過去には「7条解散」に否定的な発言も

衆院選を10月27日投開票の日程で行う考えを示す石破茂総裁=9月30日午後、自民党本部で(平野皓士朗撮影)

石破氏は昨年3月31日の自身のブログでも、党利党略による解散権の濫用を批判。「衆院の解散・総選挙は、内閣不信任案が可決されたり、予算案や重要法案が否決されるなど、内閣と衆議院の意思が異なった場合に主権者である国民の判断を仰ぐために行われるのが憲法の趣旨であり、時の内閣の基盤を安定させるために行うといった発想はとるべきものではありません」との考えを明らかにしていた。 2020年7月の共同通信加盟社論説室研究会の講演でも、衆院解散は憲法69条に基づき内閣不信任決議案が可決された場合に限るべきだとする持論を披露していた。

 衆院解散 憲法69条は、衆院で内閣不信任決議案が可決、または信任決議案が否決されたとき、内閣は衆院解散か総辞職を選ばなければならないと定める。7条では、「内閣の助言と承認」により行う天皇の国事行為の一つとして衆院解散が規定されていることから、実質的に内閣の権限で解散できると解釈される。現行憲法下での衆院解散は25回。69条解散は4回、7条解散は21回。任期満了による総選挙は1976年の1回のみ。
 衆院解散で失職した前衆院議員が7条解散の違憲性を主張した「苫米地事件」の最高裁判決(1960年)では、憲法判断は回避された。69条解散以外の裁量的な解散は認められないとする学説もある。

◆野党は反発「やっぱり石破さんも党利党略なのね」

石破氏の「変節」に、野党は反発している。 立憲民主党の枝野幸男最高顧問はX(旧Twitter)で、仮に石破新首相が早期解散に踏み切った場合は「国会の多数意思で新内閣が成立しているのですから、(石破氏の言う)69条の想定している内閣と国会の意思が食い違った場合と対極にあります」と指摘。「言い訳にするにしても、あまりにも粗雑な論です」と批判した。 枝野氏は「党首討論だけなら全体で1時間未満。野田(佳彦)代表と石破総裁との討論は見ものですが、例えば他の議員は論戦の場がなく、石破vs辻元(清美参院議員)のような論戦は見られません。論戦で評価が上がると期待するよりも、マイナス評価になることから逃げたと言われても仕方ありません」ともつづり、「『やっぱり石破さんも党利党略優先なのね』という感想です」「過去のご自身の発言との整合性を求めるものです」などと苦言を呈した。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。