自民党の石破茂総裁が10月27日投開票の日程で総選挙を行う意向を示し、神奈川県内の与野党も選挙モードに突入した。ただ、首相就任前の唐突な表明に、自民党内からも「違和感がある」といった声が上がった。(曽田晋太郎、志村彰太)  「青天のへきれきだ」。ある自民のベテラン県議は、首相就任前の解散表明に戸惑いを隠さなかった。「石破さんは衆院解散・総選挙について、野党と論戦を交わした上で適切な時期を判断すると言っていた。野党との論戦もままならない中で解散すれば、足をすくわれる可能性もあるのでは」と吐露。特に県内には無党派層が多く、言行不一致の政治姿勢に批判が集まれば「影響をもろに受けるかもしれない」と、議席減への不安も口にした。別の県連幹部は「決まった以上、粛々と(準備を)進める」と語るにとどめた。  一方、野党は一斉に反発した。立憲民主党県連の青柳陽一郎代表は「論戦が必要としていたこれまでの発言と異なる。ブレブレだ」と指摘。「県民には、こんなペテンにだまされてはいけないと訴えたい」と語気を強めた。  日本維新の会の県組織の金村龍那代表は「裏金問題の説明責任を果たさず、早期に選挙を打つのは、『負けを減らす』ということ以外に(狙いが)感じられない。自民対維新という形で対決構図を描いていきたい」と強調。「(選挙の)顔のすげ替えでは好転しないほど、自民党への信頼は失われている」とも述べ、新政権の布陣も脅威ではないという認識を示した。

◆県内から役員に2人起用 自民人事 閣僚は3人の見通し

自民党総裁選に向けた街頭演説に参加した(左から)菅義偉氏、坂井学氏、小泉進次郎氏、三原じゅん子氏=9月8日、横浜市で

 30日の自民党役員人事で、県内からは菅義偉前首相=衆院神奈川2区=が副総裁、小泉進次郎元環境相=同11区=が選挙対策委員長に起用された。石破茂総裁周辺は人選の狙いを「菅氏を(最高顧問に就任した)麻生太郎氏とともに役員に就けることで、党内基盤を固めたいのだろう。小泉氏は人気が高く、自身と『二枚看板』で衆院選を戦おうとしている」と解説した。  党県連の梅沢裕之幹事長は、菅氏について「党を全体的な見地からまとめる立場。今まで通り活躍してほしい」と述べ、県連会長の小泉氏には「全国を見る役で、県連にいることは少なくなるが、留守をしっかり守りたい」と力を込めた。  菅氏は3年前の首相退任後、党内で非主流派に追いやられたが、再び表舞台に立つことになった。交流のある横浜市議は電話で祝意を伝えたが、「おう」と短い返事があっただけで、冷静な様子だったという。  小泉氏に対しては、岸田政権下でぎくしゃくした自公関係の修復にも期待がかかる。公明党のカウンターパートとなる三浦信祐選対委員長=参院神奈川選挙区=は自身の地元・横須賀市にある防衛大の准教授を経て政界入りしており、同時期に党県組織代表を務めるなど共通点も多い。  1日の組閣では、浅尾慶一郎参院議院運営委員長=同=が環境相、三原じゅん子参院議員=同=がこども政策担当相、坂井学元官房副長官=衆院神奈川5区=が国家公安委員長として初入閣することが内定した。浅尾、三原両氏がそろって閣内に入ることを巡り、地方議員の間には「改選期が同じ『ライバル』を同時に引き上げる意図が分からない」と困惑も広がった。(曽田晋太郎、志村彰太)


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