石破茂首相は4日の衆院本会議で、就任後初の所信表明演説を行った。自民党派閥の裏金事件を受け、政治への信頼回復のため「私自身も説明責任を果たす」と強調。賃上げと投資促進による成長型経済の確立に決意を示した。地方創生政策の再活性化を掲げた。
首相は裏金事件が国民の政治不信を招いたとして、「深い反省」を表明。政治資金収支報告書への不記載があった議員と「改めて向き合い反省を求める」と明らかにした。
「政治家のための政治ではない。国民のための政治」の実現を目指し、「ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げる」と強調。政治資金規正法の順守や、政治資金の透明性を高める努力を約束した。
失われた信頼を取り戻すとして、首相は「納得と共感を頂き安全安心で豊かな日本を再構築する」と決意を示した。
経済政策では、岸田政権の路線を踏襲し、デフレ脱却を最優先に実現するため、「経済あっての財政」に基づく経済・財政運営を行う考えを示した。「賃上げと投資がけん引する成長型経済」を掲げ、物価上昇を上回る賃金上昇の定着や、「投資大国」の実現を訴えた。
首相は「地方こそ成長の主役」と位置付け、「地方創生2.0として再起動させる」と表明。「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設し、今後10年間で取り組む基本構想を策定する方針を示した。
「防災立国」を掲げ、防災庁設置に向けた準備を進めると説明。「災害関連死ゼロ」を目指す考えも打ち出した。
外交では、「現実的な国益を踏まえた外交」を進める方針を示し、「日米同盟の抑止・対処力を強化する」と述べた。中国との「戦略的互恵関係」の推進を掲げつつ、東・南シナ海への進出に対する懸念を表し、9月の日本人男児襲撃事件については「断じて看過しがたい」と非難した。
来年国交正常化60周年を迎える韓国とは、米国を含め緊密な連携を図る考えを強調。自衛官の処遇改善に向け、自身をトップとする関係閣僚会議の立ち上げを表明した。
一方、自民党総裁選で掲げたアジア版北大西洋条約機構(NATO)創設や、日米地位協定の改定には言及しなかった。
憲法改正については、首相在任中の国会発議に触れ、「議論を積極的に深めてほしい」として、衆参両院憲法審査会の議論を呼び掛けた。原発に関しては「安全を大前提にした利活用」を明言した。
衆院本会議で所信表明演説をする石破茂首相=4日午後、国会内
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