上川外相(左)と岸田首相は大型連休中に分担してグローバルサウスを訪問

アフリカ3カ国を訪問中の上川陽子外相は30日、西アフリカのナイジェリアでトゥガー外相と会談した。南米に足を運ぶ岸田文雄首相と手分けして「グローバルサウス」と呼ぶ新興・途上国との経済外交を進める。

首相と上川氏は大型連休を使って、南米やアフリカで中心的な役割を担う国や、地政学上の要衝を訪問する。

首相は5月3日から就任後初めて南米を訪れる。20カ国・地域(G20)議長国のブラジル、南米5カ国の関税同盟メルコスル(南米南部共同市場)の議長国のパラグアイに向かう。

上川氏が訪問先に選んだのはマダガスカル、コートジボワール、ナイジェリア、スリランカ、ネパールの5カ国だ。サハラ砂漠より南のサブサハラを訪れるのは就任後初めてとなる。日本企業の投資などで関係を深める。

いずれもグローバルサウスと呼ばれる国々にあたる。中国やロシアと経済、軍事などでつながりが深い国が多い。両国経済の弱まりが目立つなか、日本が強みを持つ人材育成などで連携することで、グローバルサウスを引き寄せる狙いがある。

ナイジェリアはアフリカで人口や経済の規模が最も大きく、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の議長国だ。

ナイジェリアの前に訪れたコートジボワールは西アフリカの物流ハブの機能を持つ。上川氏は29日、同国のアドム外相との会談で「若者の人材育成など経済面での2国間関係をさらに強化したい」と強調した。

マダガスカルはインド洋の島で、アフリカ東岸とアジアを結ぶ海上交通路に位置する。上川氏は27日からラジョエリナ大統領らと会談し「自由で開かれたインド太平洋」の実現や経済協力で一致した。

日本の外相による訪問はマダガスカルが史上初で、コートジボワールとナイジェリアが45年ぶりだった。

日本は冷戦期に関係を深めた中ロなどや過去の統治者だった欧州諸国とは異なる立場でアフリカと独自の関係を築いてきた。1993年の第1回からアフリカ開発会議(TICAD)を主導し、アフリカの首脳らを定期的に日本に招いてきた。

2025年8月に横浜市で第9回TICADを予定する。今年8月に上川氏が議長を務める閣僚会合を開く。中ロに傾斜しすぎないよう協力策を打ち出し、米欧との橋渡し役も担う。今回の訪問はその足場づくりの側面がある。

ナイジェリアは石油や天然ガスなど資源も豊富で20カ国・地域(G20)入りを目指す。コートジボワールとともにサハラ砂漠南部のサヘル地域や西アフリカの政情が不安定な国にも近い。

日本もテロの抑止や避難民流入への対処などで支援し、法の支配の重要性の共有を確認する狙いがある。歴史的結びつきや移民問題でアフリカへの関心が高い欧州諸国との連携にもつなげる。

国連によるとアフリカ全体の年齢の中央値は23年時点で19歳ほどと若い。人口は50年に23年の1.7倍になる見通しだ。国内の少子高齢化に悩む日本企業の新たな市場となる可能性がある。

外務省によると上川氏が今回訪れたコートジボワールの場合、進出した日本企業がこの10年で2社から21社に増えた。

中ロや米欧はそれぞれ首脳級協議の枠組みを設けており、アフリカ市場に注目する。中国は広域経済圏構想「一帯一路」のもとアフリカで道路や鉄道などのインフラ開発に力を注いでおり、日本には危機感がある。

政府は日本企業のアフリカ進出のため、一部の国の在外公館に新たに「経済広域担当官」を置いて後押しする。企業側が求める現地の制度や情勢などの情報を提供し、投資やビジネス環境の改善の要望などを聞き取って政府間交渉にも役立てる。

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