兵庫県知事選は17日、投開票日を迎えた。内部告発問題に端を発し、前知事の斎藤元彦氏(47)が全会一致で不信任決議を突きつけられて始まった選挙戦。様々な意見が飛び交い過熱した異例の展開の末に、新知事が決まる。
今回の知事選の発端となったのは、県の前西播磨県民局長が3月中旬、一部の報道機関などに送付した斎藤氏ら県幹部に関する告発文書だ。同氏のパワハラや贈答品の受領など7項目について指摘する内容だった。
文書の存在を把握した斎藤氏は側近らに告発者を調べるよう指示。記者会見では「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書」などとして疑惑を否定した。
前県民局長は4月に県の公益通報制度を利用して同様の通報をしたが、県は公益通報の調査結果を待つことなく、「(文書は)核心的な部分が事実ではない」として、5月に停職3カ月の懲戒処分とした。
県の対応を巡り、県議会から中立性の高い調査を求める声が高まり、地方自治法に基づく強い調査権限を持つ調査特別委員会(百条委員会)を6月に設置。疑惑解明に向けた調査が始まった。
だが証人として出頭が決まっていた前県民局長が7月に死亡。斎藤氏を支えてきた最側近の片山安孝副知事(当時)が辞職するなど、県政が混乱した。
県職員に対するアンケートや百条委での証人尋問などで実態が明かされるたび、斎藤氏や県幹部らへの批判が相次いだ。県議会は9月19日、全会一致で不信任を決議した。
議会を解散するか、身を引くか――。進退に注目が集まるなか、同氏が表明したのは、自動失職後に県民に信を問い直す出直し選への出馬だった。
名乗りを上げたのは斎藤氏のほか、いずれも無所属で前参院議員の清水貴之氏(50)、元尼崎市長の稲村和美氏(52)、医師の大沢芳清氏(61)=共産党推薦、会社社長の福本繁幸氏(58)、政治団体党首の立花孝志氏(57)、会社社長の木島洋嗣氏(49)の計7人。
個別の政策以上に、再選を目指す斎藤氏の内部告発対応や知事としての資質をどう見るかが主な争点となった。
自民党や日本維新の会の支援を受けた前回選挙と違い、組織の後ろ盾を失った斎藤氏に対し、有力視されたのが稲村氏だ。自民の一部県議らの支援や県内の首長との連携を深めて県政の一新を掲げ、神戸新聞が10月中旬に実施した情勢調査では他候補をリードすると報じられた。
一方、失職直後から駅前に立ち頭を下げ続けた斎藤氏は当初、通行人にときどき話しかけられる程度。だがSNS上で同氏を応援するハッシュタグなどを通じて支持の声が日増しに強まり、10月31日の告示日には第一声を聞くために数百人の聴衆が集まった。
選挙戦は「場外」からも影響を受け、異例の展開をたどった。
告示日目前の10月下旬に開催された百条委で、証人として出頭した片山氏が前県民局長の公用パソコンに保存されていたとされる私的なデータの存在に言及。だが「個人のプライバシー情報」を理由に調査対象としないとした対応にネット上などで不信の声が拡散し、告発文書問題の真相を巡る様々な臆測が飛び交った。
審議は選挙への影響を避けるために非公開の秘密会で開かれたが、片山氏らのやり取りを録音したとみられる音声がネット上に流出。「斎藤氏を応援したい」として立候補した立花氏は登録者数60万人超の自身のユーチューブチャンネルなどで県議会の対応を厳しく批判した。
告発文書に端を発した問題から8カ月。民意はどの候補者を次の県政のリーダーに選ぶのか。前例のない選挙戦の大勢が判明するのは17日夜遅くになる可能性がある。
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