18日、リオデジャネイロで会談したスターマー英首相㊧と石破首相=ロイター

【リオデジャネイロ=三木理恵子、ロンドン=江渕智弘】石破茂首相とスターマー英首相は18日にブラジルで会談し、経済版「2プラス2」の新設を決めた。貿易や経済安全保障といった国際課題に連携して取り組む協議体になる。トランプ米政権の誕生など世界の先行きは見通しづらい。日英で反保護主義を掲げ経済的リスクに備える。

両首脳は会談で「力強い経済成長の実現は日英共通の優先課題だ」と一致した。そのための手段として外務・経済閣僚による経済版2プラス2を設け、対応策を検討していくと合意した。

12月に英国が加盟する新たな環太平洋経済連携協定(TPP)が発効する。経済版2プラス2はTPPの動きも踏まえ、早ければ年明けにも初会合の開催を調整する。

英首相官邸は首脳会談の後に声明を出し「日英両国の成長と繁栄に不可欠な国際貿易、経済、地政学的な問題に関する日英両国の協力がさらに前進する」と強調した。日本が同枠組みを設けるのは米国に次いで2カ国目になる。

自国市場がそれほど大きくない日英は、自由貿易などの戦後の経済秩序の恩恵を受けてきた。経済的威圧で秩序を揺るがす中国とともに、米国でトランプ政権が誕生するのも新たなリスクになり得る。

2017年に発足した1期目のトランプ政権時、欧州連合(EU)加盟国だった英国は単独で米国と関税交渉する必要がなかった。2期目のトランプ政権が再び輸入品に高関税を課す事態になれば、今回は圧力を直接受けることになる。

日英は経済版2プラス2で貿易面の連携策などを話し合い、対外交渉力を高めていく。自由で公正な経済こそが民主主義の根幹だと訴え、トランプ政権のつなぎ留めを狙う。

経済版2プラス2で貿易と並んで軸となる経済安保の問題は、対中国・ロシアで重要になる。半導体や鉱物資源といった重要物資の確保で、日英両国が生産や加工の強みを生かしてサプライチェーン(供給網)の多角化に取り組む。

人工知能(AI)や量子など世界が開発を競う先端技術でも、両国の知見を生かして競争力を高めていく。

日英が経済版2プラス2といった閣僚間の高度な協議体を設けることができたのは、経済・安保あらゆる分野で協力関係を強化しているためだ。

英国は20年のEU離脱を機にインド太平洋に本格的に目を向け始めた。日本は経済連携協定(EPA)を締結するなど、EU離脱時に英国を支えた経緯がある。同じ海洋国家として安保協力も進めやすく、いまは「準同盟」関係と表現されるまでになった。

EU離脱を主導した英保守党政権に比べれば、7月に誕生した労働党のスターマー政権はインド太平洋への関心が薄いとされる。経済版2プラス2は現政権下で英国が日本に関心を向け続ける効果も見込む。

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