日本維新の会は12月1日投開票の代表選へ、候補者同士の本格的な論戦に入った。「身を切る改革」を訴えてきたものの発信が薄まり、自民党や立憲民主党に次ぐ「既成政党」の一角とみられるようになった。議席を減らした衆院選から、来夏の参院選に向けた党勢の立て直しを急ぐ。
代表選には吉村洋文共同代表(大阪府知事)、金村龍那衆院議員、空本誠喜衆院議員、松沢成文参院議員の4人が立候補した。
「日本維新の会の存在意義、パーパスをしっかりいま一度固めていく必要がある」。18日のオンライン討論会で吉村氏は、党の進む方向性が十分に共有できていないとの危機感を示した。
衆院選で維新は公示前から5議席減の38議席にとどまった。地盤の関西以外の小選挙区で苦戦し、比例代表の得票は510万と2021年の前回選からおよそ300万も減らした。
松沢氏は「何をめざす政党かわからない。維新は既存政党化している」と述べ、具体的な改革プランを提示できなかったことが敗因との認識を示した。
金村氏も19日のオンライン討論会で「国会において自民党の補完勢力にみられていたことが大きかった」と振り返った。
衆院選で維新は高齢者の医療費負担の引き上げや現役世代の社会保険料軽減を掲げた。それでも「国民の手取り増」を訴え、議席を4倍に増やした国民民主党とは対照的な結果に終わった。れいわ新選組や参政党なども躍進した。
つまずきの予兆は23年7月に遡る。馬場伸幸代表は、維新は自民党と改革を競う「第2自民党でいい」と表現し党内外から批判を浴びた。24年通常国会は政治資金規正法の改正を巡って自民党との交渉が頓挫し、衆院で賛成した法案に参院で反対するなど迷走した。
21年の兵庫県知事選で維新が推薦した斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発された問題では対応が後手に回った。国際博覧会(大阪・関西万博)事業費の膨張も11年以降、大阪府知事と市長の座を占め続けてきた維新への逆風となった。
看板政策だった「大阪都構想」の挫折や公務員の既得権益批判といった手法が目新しさを失ったことに加え、自民党との間合いや党内統治に疑問を抱かせる出来事が続き、改革イメージの低下を余儀なくされた。
日本経済新聞社とテレビ東京の15〜17日に実施した世論調査で、維新の政党支持率は5%と昨年12月の12%から半分以下に落ち込んだ。
看板の「身を切る改革」にも公然と異論が出始めた。維新の国会議員は歳費の2割を党を通じて被災地などに寄付してきた。地方議員も議員報酬の削減に取り組んできた。
空本氏は18日の討論会で「全国政党にするために見直しが絶対に必要だ」と指摘し、十分な活動資金の確保を求めた。
4候補とも高校無償化などの現役世代支援や社会保障改革、地方分権の推進では一致している。全国政党化の旗も降ろしていない。
有権者が既成政党への不信感を示す傾向は続く。17日投開票の兵庫県知事選では斎藤氏が再選した。県議会の不信任決議で失職した斎藤氏は「維新を含めた既成政党と対峙する改革者だ」との言説がSNSで目立った。
24日投開票の名古屋市長選は報道各社の情勢調査で、日本保守党の広沢一郎元副市長と無所属の大塚耕平前参院議員の接戦が伝えられている。
大塚氏は自民、立民、国民民主、公明の各党の推薦を受ける。日本保守党の河村たかし前市長の辞職に伴う選挙で、無党派層やSNSで主に情報を集める人たちの動向が結果に影響を与える可能性がある。
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