中谷元防衛相は21日、訪問先のラオスの首都ビエンチャンで中国の董軍国防相と会談した。中谷氏は冒頭で「中国の軍事活動の活発化は日本として深刻に懸念している」と話した。「日中防衛当局間で率直な議論と意思疎通を重ねることは極めて重要だ」と呼びかけた。
拡大東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議にあわせて対話した。董氏は台湾や尖閣諸島問題などを巡り「懸念を表明する」と述べた。「両国の防衛当局間が議論することは中日関係と地域の平和に重要な意義がある」と答えた。
中国は安全保障面で基本的な立場は保ちつつ、日本の懸念への歩み寄りともいえる対応を取り始めている。
日本の外務、防衛両省は19日、中国軍機が8月26日に日本の領空を侵犯したことに関し中国政府から説明を受けたと発表した。「技術的な問題であり、領空に進入する意図はなかった」と釈明し、再発防止に努力すると表明した。
中国側の「再発防止に努める」との表現は踏み込んだものといえる。
同様の表現は20年前の2004年に中国の原子力潜水艦が潜航したまま沖縄県・先島諸島沖の日本領海に入ったとき以来だ。潜ったまま領海に入るのは他国の船舶が秩序や安全を害さない限り通航を妨げられない「無害通航権」の対象外だ。
中国はこの事案以降も無害通航と認められる可能性はあるものの、領海に繰り返し入ってきた。日本側が問題視しても中国側は再発防止には言及していない。
米国のトランプ次期政権の発足が年明けの1月に控えていることが背景にあるとみられる。
トランプ氏は「米国第一主義」のもとに中国に高い関税をかけるといった措置を掲げる。日中間の緊張材料についても対話できる状況にすることで、貿易などの対米戦略で日本と擦り合わせやすい環境をつくる狙いがあるとの指摘が出ている。
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