広沢一郎氏㊨は河村たかし氏の支援を受けた選挙活動を展開した(23日、名古屋市)

衆院選で当選した河村たかし前市長の自動失職に伴う名古屋市長選が24日投開票され、無所属新人の元副市長、広沢一郎氏(60)=保守推薦=が初当選を確実にした。前参院議員の大塚耕平氏(65)=自民、立憲民主、国民民主、公明推薦=ら6人を破った。

広沢氏は河村前市長から後継指名を受け、市民税減税や名古屋城の木造復元など河村氏の政策の継続を訴えた。市民税減税を現在の5%から10%に強化するとしたほか、保育料の0歳児からの無償化、就学援助の支給対象の拡充などを重点施策に掲げた。

広沢氏は名古屋で根強い河村氏の人気を基盤として選挙戦に臨んだ。河村氏は衆院議員を5期務めた後、2009年に名古屋市長に転じ、4期15年在任した。10月の衆院選で愛知1区から出馬し、自民と立憲民主の前職に大差をつけて勝利した。

河村氏は地方議員の給与削減などを一貫して訴えてきた。自民党の政治資金収支報告書の不記載など、政治とカネを巡る問題で既成政党への不信感が高まった。河村氏の従来からの主張が有権者の共感を呼んだ側面がある。

与野党が相乗りで推薦した大塚氏はこうした政党不信が逆風となった。選挙戦序盤は地方議員による街頭活動を控えるなど政党色を消して戦った。報道各社の情勢調査で劣勢が報じられた中盤以降は、国民民主や立憲民主の幹部が相次いで名古屋に入るなど政党が前面に出て支援した。

選挙戦中盤の17日には兵庫県知事選が投開票され、前知事がSNSを原動力に勝利した。名古屋市長選は動画投稿サイト「ユーチューブ」の再生回数やX(旧ツイッター)の閲覧数で下回るものの、SNS上の攻防は活発だった。

兵庫県知事選の終了後はSNS上の「勝手連」による広沢氏の支援が広がった。広沢陣営もこうした動きを歓迎し、さらなる投稿を呼びかけた。

広沢陣営は序盤から、与野党の包囲網に一人で立ち向かう構図を強調した。こうした演出がSNSで有利に働いた面がある。SNSと選挙の関係に詳しい国際大学の山口真一准教授は「対立構図は人の目を引き、拡散しやすい。強大な相手に立ち向かう構図は効果的だ」と話す。

SNS上では大塚氏に「増税派」とレッテルを貼る投稿が広がりをみせた。広沢氏が市民税減税の継続を明確に主張した一方、大塚氏は「効果を検証して判断する」と述べるにとどめていた。

大塚陣営は中盤以降、こうした投稿を「デマ」だとして打ち消しに動いた。国政で消費税の減税を訴えたとSNSでも応戦した。終盤に名古屋に応援に入った国民民主の幹部らも街頭演説で打ち消しに時間を割いた。

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