衆院本会議で所信表明演説をする石破首相(29日)

石破茂首相は29日、衆参両院本会議で所信表明演説に臨んだ。経済の活力を取り戻すため「コストカットではなく付加価値の創出に力点を置いた経営・経済への転換」を提起した。所得税の納付が必要になる「年収103万円の壁」を2025年度税制改正で議論し引き上げると言明した。

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重要課題として①外交・安全保障②日本全体の活力③治安・防災――の3つを挙げた。

スイスのビジネススクールIMDが6月に発表した2024年の世界競争力ランキングで日本は過去最低の38位だった。首相は経済安全保障の観点から「付加価値の高いサプライチェーン(供給網)を国内に回帰・立地させていくことも重要だ」と強調した。

「国民の暮らしが豊かになったと感じてもらうためには、現在や将来の賃金・所得が増えていくことが必要だ」と述べた。最低賃金の引き上げの必要性に触れた。

「戦略分野のイノベーションとスタートアップの支援、スキル向上などの人への投資を進める」と主張した。省力化やデジタル化投資の促進などを後押しし「賃上げと投資がけん引する成長型経済」の実現を呼びかけた。

首相は演説冒頭で1957年2月の石橋湛山内閣の施政方針演説の言葉を取り上げた。「おのおのの立場を明らかにしつつ、力を合わせるべきことについては相互に協力を惜しまない」と引用し、他党の意見も聞きながら政権運営に臨む姿勢を見せた。

自民党と公明党は10月の衆院選で過半数割れして少数与党となった。

総合経済対策の取りまとめや25年度税制改正の協議で国民民主党の意見を取り入れる。「年収103万円の壁」引き上げのほか、ガソリン減税について「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」と語った。

看板政策の地方創生は「日本の活力を取り戻す経済政策であり、多様な幸せを実現するための社会政策だ」と説いた。25年国際博覧会(大阪・関西万博)の機会を最大限活用する。今夏の米不足騒動に言及し食料安保の確保へ生産基盤の強化を訴えた。

首相は臨時国会や新首相を指名する特別国会の冒頭で所信表明演説を実施し、政権の基本方針や重点政策を説明する。石破首相は12月2日から衆参両院で各党の代表質問に答える。就任直後の10月4日にも演説し、今回は少数与党となって初めてだった。

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