会談の冒頭、ブラジルのルラ大統領(右)と握手する岸田首相(3日、ブラジリア)=共同

【ブラジリア=秋山裕之、水口二季】岸田文雄首相は3日、訪問先のブラジルでルラ大統領と会談した。同国が生産するバイオ燃料と日本が強みを持つハイブリッド車(HV)などの普及に向けた政策協調の枠組みをつくる。環境問題を重視するブラジルと脱炭素で協力を深める。

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ブラジルは国際社会で発言力を増す新興・途上国の中心だ。2024年の20カ国・地域(G20)で議長国を務める。首相はルラ氏と中東やウクライナの情勢で懸念を共有し、北朝鮮の核・ミサイル開発を非難した。

法の支配に基づく国際秩序を維持・強化する重要性を確認した。日本はブラジルが中国やロシアに傾斜しすぎないよう幅広い協力案件を積み上げる狙いだ。

10項目の包括的な協力を盛り込んだ共同声明をまとめた。

脱炭素の協力パッケージで合意した。その柱として持続可能な燃料とモビリティーの推進枠組み(ISFM)を据える。経済産業省の次官級で協議し、首脳に報告する仕組みにする。

ブラジルはサトウキビなどを原料とするバイオエタノールの生産で米国に次ぐ世界2位だ。二酸化炭素(CO2)からつくる合成燃料も含めて「持続可能な燃料」として両国で活用を広げる。

日本は自動車を筆頭にモビリティー産業に強みを持つ。航空分野の再生航空燃料(SAF)の原料にも使う想定だ。両国で具体的な企業プロジェクトを支援するほか、2国間貿易だけでなく世界市場の拡大をめざす。

世界で電気自動車(EV)の普及が進むものの、途上国などは充電インフラの整備に時間がかかる。HVやバイオ燃料のニーズは根強いとみる。有志国を巻き込んでG20サミットの機会に発信する。

脱炭素の推進へ日本はアマゾンの森林を守るための基金にアジアとして初めて300万ドルを拠出した。焼き畑で荒れたブラジルの農地を改良するような支援に取り組む。

会談で日本と南米の関税同盟メルコスル(南部共同市場)の関係強化の重要性を確認した。牛肉市場の開放をめぐって日本は慎重に判断する。共に国連安全保障理事会の常任理事国入りをめざしており、両首脳は国連改革に関しても話し合った。

共同記者発表でルラ氏は「ブラジルの牛肉をぜひ輸入してほしい」と呼びかけた。日本との貿易が減ったと苦言を呈した。

ブラジルでは24年以降、トヨタ自動車やホンダなど自動車大手の大型投資も相次いでいる。日本は産業分野でさらなる投資が続けば関係の強化につながると期待する。

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