自民党総務会に臨む党幹部ら(17日、党本部)

自民党は17日、政治資金規正法の改正案を国会に提出した。公明党の合意を得られないまま異例の単独提出となり、自公連立の枠組みに影を落とす。日本維新の会とも協力を探るものの、先行きは読めていない。6月23日に会期末を迎える今国会での成立は綱渡りだ。

自民党は17日の総務会で改正案を了承し、党内手続きを終えた。パーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に下げると明記した。政党が政治家個人に支払う政策活動費は、50万円を超える場合に使途公開の対象にするとした。

岸田文雄首相(党総裁)は17日、首相官邸で記者団に「実効性のある改正案になった」と述べた。今後の国会審議について「公明党とも力を合わせ、野党の意見も聞きながら真摯に対応する」と語った。

衆院は22日に開く政治改革特別委員会で法案審議に入る。自民党のほか野党案についても同時並行で議論する見通しだ。自民党は与野党の協議を経て5月中に衆院を通過させ、参院で6月23日までに成立させる段取りを描く。

成立に向けて公明党との擦り合わせが焦点になる。公明党は与党協議でパーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」とする主張を貫いた。政策活動費の使途公開でも議員に明細書の作成を義務付ける案を推し、自民党とすれ違った。

自民党が法案を単独で提出するケースは極めて異例だ。森山裕総務会長は17日の記者会見で「与党案をまとめるのがベストだが、今国会で成立させるため時間的な制約もある」と強調した。

自民党は公明党に譲歩を重ねているとの立場で、歩み寄らない公明党に不満を募らせる。自民党は4月下旬にまとめた党の見解でパーティー券の公開基準額の引き下げや政策活動費の使途公開に慎重な姿勢を見せたが、実務者協議で軌道修正した。

自民党幹部は衆参両院での改正案の採決で、公明党が最終的に自民党に歩み寄ると期待する。「公明党が採決で反対すれば連立の解消を意味する」と語り、同党に譲歩を迫る構えだ。

公明党が譲歩する保証はない。石井啓一幹事長は17日の記者会見で、パーティー券の公開基準額を「5万円超」とする主張などを堅持した。「今のところ単独で(法案を)提出する考えはない」と言明し、与野党の協議に臨む考えを示した。

「クリーンな政治」を掲げる公明党は2025年秋までにある衆院選に加え、25年の参院選や都議選を意識する。規正法改正は自民党派閥の政治資金問題が起点にあり、公明党内には自民党に歩み寄る必要はないとの声が根強い。

自民党は参院で単独過半数を確保していない。法案成立には他党の協力を必要としており、野党第2党である維新も連携相手の一つに期待する。

16日には自民、維新の国会対策委員長が会談し、自民党側が調査研究広報滞在費(旧文通費)の改革に向けた協議体の設置を提案した。旧文通費改革をてこに維新との協議を実現し、公明党の態度を軟化させたい思惑が透ける。

現状は維新側は歩み寄りに慎重だ。馬場伸幸代表は16日の記者会見で自民党案について「まともに議論する必要はない」と指摘した。政治不信を招いた自民党と取引すれば支持層が反発するリスクがある。

立憲民主党は公明党を揺さぶる。泉健太代表は17日の記者会見で「本来公明党の考えていることは野党案に近いと思う。立ち位置を守ってもらわなければクリーンな政党の名が廃る」と話した。

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