26日投開票の静岡県知事選は自民党推薦候補と立憲民主、国民民主両党が推薦する候補が激しく争う与野党対決の様相が強まる。鍵を握りそうなのが、リニア中央新幹線静岡工区の着工を認めなかった川勝平太前知事の支持票だ。大井川の水資源や南アルプスの自然環境に不安を抱く民意がどこに向かうのかが注目される。

  • リニア工事原因か、岐阜・瑞浪で水位低下 JR東海、14カ所で確認

 いずれも無所属新顔で元副知事の大村慎一氏(60)=自民推薦=、前浜松市長の鈴木康友氏(66)=立憲、国民推薦=はリニア着工ではともに「推進」を掲げる。川勝氏も「推進」を掲げながら水資源や環境保全に配慮して着工に反対してきた。だが大村、鈴木両氏は課題を解決して着工の道筋をつけるとして推進路線を強める。

 両氏の違いは、川勝路線の評価とJR東海や国との議論の進め方だ。大村氏は川勝氏を「問題解決に取り組んだとはいえない」と批判し、「1年以内に結果を出す」と訴える。一方の鈴木氏は「諸問題が議論された事実に敬意」と評価し、「一歩一歩推進していく」と主張する。

 だが、選挙戦中にリニア工事を巡る岐阜県瑞浪市の水位低下問題が明らかになり、両氏はより慎重な姿勢になった。トンネル工事が進む同市の14カ所で井戸やため池などの水位低下が確認され、静岡県内でも不安が再び高まった。

 大村氏は1年以内に結果を出すと掲げていたが「いったんストップ」と表明。鈴木氏は「拙速に事を進めない」と強調して川勝路線の一部継承を打ち出した。

 一方、共産党県委員長の森大介氏(55)=共産公認=はリニア工事の中止を訴え、「あちこちで地下水脈を破壊するリニア建設の問題、矛盾が出ている」と主張する。

 川勝氏は自民推薦候補と一騎打ちになり、4選した2021年の前回知事選で「命の水を守る」と訴え、100万票近くを獲得。33万票の差をつけて圧勝した。県民には不安がいまも根強く、「川勝票」が誰に向かうのかが選挙戦の焦点になる。

 知事選は事実上の与野党対決となっているが、自民側は幹部クラスを総動員する態勢にはなっていない。静岡には、安倍派の裏金事件を受けた党の処分で離党した塩谷立・元文部科学相の選挙区もあり、「自民党」を前面に出すと、推薦候補がまともに逆風を受ける可能性があるからだ。

 そうした中、静岡1区選出の上川陽子外相は2週続けて地元入り。しかし、「うまずして何が女性か」との発言が批判を浴び、撤回に追い込まれた。知事選は全国的な注目を集めることになり、4月の衆院3補選の「全敗」に続き、今回も推薦候補が敗れれば、自民の「負け癖」が印象づけられることになる。

 一方の野党。19日には立憲民主党の泉健太、国民民主党の玉木雄一郎の両代表が応援に入った。立憲の大串博志選挙対策委員長は20日、朝日新聞の取材に「国政全般への影響も大きい。しっかり勝ち抜きたい」と語った。(大海英史、大久保貴裕、川辺真改)

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【候補者一覧】

横山 正文(よこやま・まさふみ) 56 諸新 政治団体代表

森  大介(もり・だいすけ)   55 共新 党県委員長

鈴木 康友(すずき・やすとも)  66 無新 〈元〉浜松市長〈立〉〈国民〉

大村 慎一(おおむら・しんいち) 60 無新 〈元〉副知事〈自〉

村上  猛(むらかみ・たけし)  73 無新 アパート経営

浜中 都己(はまなか・さとみ)  62 無新 コンサル会社長

※届け出順。年齢は投開票日現在。〈 〉内政党は推薦

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