衆院政治改革特別委で自民・木原誠二氏(左)の質問を聞く、規正法改正案の提案者(右側)=23日午前

与野党は23日の衆院政治改革特別委員会で、各党が提出した政治資金規正法改正案の実質審議に入った。自民党案と野党案で差が大きい企業・団体献金の扱いを巡る対立点が浮き彫りとなった。会期末まで残り1カ月となった今国会での成立にとっての難所となる。

「(政治資金は)広く薄く集める努力が大事だ。企業・団体による献金や事業収入は許容される」。自民党案を出した鈴木馨祐氏は政治活動は一定の資金が要るとして献金の必要性を強調した。

今回の規正法改正案は資金の出入りを正しく記載しなかったことによる「裏金」の再発防止を最重視したと説明した。

その説明通り、自民党案は国会議員の監督責任の強化などを盛り込んだ一方、企業・団体献金の制限には触れていない。

立憲民主党や日本維新の会は企業・団体献金を禁止する独自法案を個別に提出した。維新の青柳仁士氏は23日の質疑で「自民党はテーブルに乗せもしない。最初から逃げている」と批判した。

立民の落合貴之氏は「賄賂性が高い」と指摘。長妻昭政調会長は23日の記者会見で、自民党の主張を「(政治活動に)お金をかけようと思ったらキリがない。自民党が今の権益を手放したくない方便だ」と断じた。

自民党と野党の立場が異なる背景には政党としての収入構造の違いがある。2022年分の政治資金収支報告書で自民党は寄付の割合が1割超と、国会議員が10人以上いる政党で最も大きい。規正法改正案に禁止を盛らなかったのは党内に反対論が根強いためだ。

自己資金が多くない人が政治活動しやすい環境を整える意味でも献金は必要という声もある。

立民も党内が全面禁止でまとまっているわけではない。労働組合から支援を受けている議員を中心に慎重論がくすぶる。小沢一郎氏は「何をばかなことをやっているんだ」と反対を明言する。

立民案は政治団体からの寄付は禁止対象から除外しており、実効性を疑問視する声もある。

本来は政治家の活動経費のあり方を改めて議論すべきだとの意見はあるものの、各党とも「政治とカネ」を巡る問題への世論の厳しい反応を意識してか広がりを欠く。

自民党は参院で過半数の議席を持たないため、成立させるには連立を組む公明党など他党との協力が不可欠となる。

公明党は自民案の共同提出を断った。企業・団体献金の扱いについては石井啓一幹事長が「(今回の与野党協議で)土俵を広げて議論するのは難しい」と話しており、慎重な姿勢だ。

自民党は会期内成立に向けて月内の衆院通過をめざす。そのために想定する他党との修正協議は議員の罰則強化や政治資金パーティー券購入者の公開基準、政策活動費の扱いといった点に軸足を置く。溝が最も深い企業・団体献金については着地点が見えにくい。

維新の馬場伸幸代表は23日の記者会見で「政治資金問題を起こした自民党が一番ぬるい改正法案を出している。こういった状況で自民党の考え方に乗っていくことはあり得ない」と語った。

維新は自民党に調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や、政策活動費の明細と領収書の公開だけでなく企業・団体献金の禁止も求めている。

馬場氏は「自民党がいくつかの維新の考え方を飲んだから自民案にのるということは絶対にない」と話しつつ「国民がよく決断したという大きな球を飲み込めるかどうかだ」とも付け加えた。

23日の質疑では政策活動費の使途公開も議題となった。自民党案は50万円超を受け取った議員が項目別の使用額を党に報告し、党が収支報告書に記載する手法を掲げる。

鈴木氏は政党外交や選挙対策の費用などを念頭に「公開になじまないものが存在する」と話した。長妻氏は「項目を分けてもブラックボックスは変わらない」と批判した。青柳氏は「50万円以下は現行の政策活動費が存続する」と追及した。

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