素粒子ミューオンを減速・加速させるための装置を開発した=KEK提供

高エネルギー加速器研究機構(KEK)などは、物質やエネルギーの最小単位である素粒子の一種「ミューオン」を人工的に減速させ、再び加速させる技術を開発した。物理現象を調べる基礎研究のほか、素粒子を使った構造物の内部調査技術や顕微鏡の開発につながる可能性がある。

ミューオンは電子と似た性質を持つ素粒子だが、質量が約200倍重く、物質を透過する性質がある。ただ100万分の2秒で崩壊して別の粒子になるため、人工的に制御する技術は難しかった。

加速器を使って人工的に作ったミューオンは光のおよそ30%の速度で、バラバラな方向に飛んでいく。研究グループは発生したミューオンをシリカエアロゲルという材料にぶつけ、シリカエアロゲル中の電子とミューオンをくっつけた。レーザーを使ってミューオンから電子をはがすと、光速の0.002%まで減速した状態のミューオンになった。

減速したミューオンに再び電磁石でエネルギーを加えると光速の4%ほどまで加速し、方向のそろったビームになった。今後はさらに速く再加速する技術を開発する。

ミューオンは現代物理学の根幹となる「標準理論」を検証する実験に使われており、新たな物理現象の解明につながる。また方向のそろったミューオンは均等にエネルギーが加わって細く絞ることができるため、解像度の向上につながる。物質の内部を調べる手法や顕微鏡などへの応用が期待される。

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