理化学研究所の沼田圭司チームリーダーらは褐藻のワカメやコンブの性質を一時的に変える技術を開発した。ペプチド(たんぱく質の断片)を含む微粒子を使う。食品向けに大量のたんぱく質を生産するなどの用途を見込む。

開発した微粒子を褐藻の一種のシオミドロに作用させた様子。RNAについた蛍光色素が取り込まれて光っている=理化学研究所の沼田圭司チームリーダー提供

褐藻は光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収してでんぷんなどの有用物を作る。大気中のCO2を海にためる手段として期待される。ただでんぷん以外の有用な物質を作らせる研究は進んでいない。

研究チームは細胞の膜をすりぬけることができる分子と特定の遺伝子の働きを抑える機能を持つ核酸「siRNA」などを組み合わせて微粒子を作った。試しに褐藻の成長を担う遺伝子の働きを抑えるsiRNAを微粒子にしてみると、細胞の内部に届いて成長を抑えた。

たんぱく質の合成を抑制している遺伝子の働きを抑えるsiRNAを微粒子にすれば、たんぱく質を多く作るようになる可能性がある。siRNAと同じ核酸であるDNAなどを入れてたんぱく質を作らせる方法もありえるという。実現すればワカメを高たんぱく食品や飼料に活用できる。

siRNAは褐藻のゲノム(全遺伝情報)を変えずに遺伝子の働きの強さを変える。効果は数日間にとどまるが、設計を工夫すれば長く続くようになるという。慶応義塾大学との共同研究で、成果は米化学会誌に掲載された。

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