人新世の代表地として提案されていたカナダ東部のクロフォード湖=Conservation Halton提供

国際学会「国際地質科学連合(IUGS)」は20世紀半ばからの地質学上の時代区分を、人類活動が地球環境に大きな影響を及ぼす「人新世(じんしんせい)」とする案を正式に否決した。15年間に及ぶ議論に幕が下りた。

IUGSは声明で「人類活動が地球環境に与える影響を示す貴重な言葉」として、一般社会では広く浸透するとの見方を示した。人新世を地質学上の時代分類である地質時代と認定することには複数の批判があったと指摘した。

人新世の案は2023年にIUGSの下部組織の作業部会が提案した。世界人口の爆発的な増加に伴い人類活動の影響が大きくなった1950年ごろを人新世の開始時期にすべきだとした。

この時期にできた各地の地層には核実験で放出されたプルトニウムが含まれ、時代の始まりを示す化学的な指標になるとしていた。

IUGSは声明で、農耕の開始や産業革命の時期など20世紀半ばよりも前から人類活動が地球環境に影響を与えていたことや、他の地質年代に比べて期間が短すぎるとの批判が内部の専門家からあったと明らかにした。

プルトニウムが指標として適切かは言及しなかったが、人類活動の影響がみられる時期は地域ごとに違うため、一つの時期を決めるのは不適切との指摘もあるという。

人新世は英語で「アントロポセン」と呼ばれ、「人類の時代」を意味する。オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞した故パウル・クルッツェン博士らが2000年ごろに提唱した。

人類は様々な物質を大量に排出して地球環境を変えており、「現在は(約1万1700年前から現在までを指す地質時代の)完新世とはもはや区別すべきだ」とした。

24年3月にIUGSの小委員会が作業部会の提案を否決したとされた。この決議は「規約違反」との指摘が内部で出て混乱が生じていたが、IUGSは採決が有効だと最終判断した。

(尾崎達也)

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