京都大学などは量子技術で温度を測る量子センサーを大幅に小型化した。作製法を工夫し、センサーの粒径を従来比で約9分の1にあたる11ナノ(ナノは10億分の1)メートルに縮めた。温度や磁場、電場の強弱を高い感度で測る。細胞の中に入れて、がんや認知症を患う原因の研究などに使う。
この量子センサーは人工的に作ったダイヤモンドでできている。ダイヤモンドは炭素原子からなるが、構造の一部に特定の原子などを入れるとセンサーとして働く。緑色の光を当てた時にセンサーが放つ赤い光の強度を見るなどして、周囲の温度や磁場、電場の強弱が分かる。
想定する用途の1つが疾病の研究だ。患者のがん組織に埋め込んで使う。細胞のわずかな異常を検知すれば、がんや認知症の原因解明につながる。センサーの本体は炭素でできているため体に優しい。ただ従来の量子センサーは粒径が100ナノメートル前後と大きく、細胞に入れる際に細胞膜を傷つける恐れがあった。
研究グループは爆薬を爆発させたエネルギーでダイヤモンドをつくる「爆轟(ごう)法」を独自に改良し、粒径を11ナノメートルまで小さくした。細胞の中に入れやすくなり、がんの原因解明などの応用研究が加速しそうだ。
量子科学技術研究開発機構やダイセルとの共同研究で、米学術誌「APLマテリアルズ」で発表した。
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