園田俊浩人工知能研究所長は「企業向けにきめ細やかな生成AIをカスタマイズなしで提供できる」と強調した(4日、川崎市)

富士通は4日、複数の生成AI(人工知能)を組み合わせる技術を開発したと発表した。生成AIの基盤となる大規模言語モデル(LLM)など各AIモデルの特徴を踏まえ、顧客の業務に適したAIモデルを自動で組み合わせる。利用企業は自社の業務に特化した生成AIを数時間〜数日で作成できる。7月からサービス提供を始める。

川崎市で開いた研究戦略説明会で発表した。 富士通の園田俊浩人工知能研究所長は新技術について「企業向けにきめ細やかな生成AIをカスタマイズなしで提供できる」と強調した。

新技術は、例えば米新興のオープンAIのLLM「GPT-4」と、富士通が東京工業大学などとスーパーコンピューターの「富岳(ふがく)」を使って共同開発したLLMを組み合わせることが可能だ。

LLMは性能の指標となるパラメーター数が大きいものや日本語に特化したもの、軽量で消費電力を抑えたものなどモデルによって特徴がある。富士通はそれぞれのLLMの特徴を踏まえ、各業務に適した最適なモデルを自動で選択できるようにした。生成AIではない通常のAIモデルとLLMを組み合わせることもできる。

富士通が自社内で、ソフトウエアの契約書と利用状況を確認する作業で同技術を活用したところ30%の工数を削減できたという。運輸業でドライバーの最適配置に活用すれば、計画策定時間を95%減らせる見通しだ。

最近は汎用の対話型LLMのほか、業務に特化した生成AIモデルが開発されている。ただ企業が業務で活用する場合、大規模データの取り扱いができなかったり、応答に時間がかかったり、企業規則や法令への準拠が不十分だったりすることがネックになっていた。富士通は新技術で既存のLLMの課題を解消し、企業の生成AIの活用を促進したい考えだ。

富士通はこのほか、生成AI関連で2つの新技術を発表した。企業規則や法令といった大量の文書を正確に処理する技術と、生成AIの回答が企業規則や法令に準拠しているかどうかを監査する技術だ。

大量の文書を正確に処理する技術では、生成AIが外部情報を参照する際に使う情報を整理する技術を発展させ、処理できるデータの量を増やした。従来のLLMは数十万〜数百万文字程度しか読み込めなかったが、1000万文字以上分析できるようにした。製品マニュアルのQ&A作成や通信障害の解析などでの利用を想定する。

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