気候変動による災害などで被害を受けるのは人権侵害にあたるとして、市民団体「気候訴訟ジャパン」は12日、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。申立書には学者や作家ら365人が連名。日弁連の勧告を通じて、政府に気候変動対策の強化などを求める。
申立書では、日弁連に対し、政府や裁判所への勧告を出すよう訴えた。求める勧告の内容は、政府による強固で具体的な気候政策の実施▽災害や熱中症による被害を人権侵害と定義する法律の整備▽気候変動が人権侵害だとする訴訟の原告となる当事者を、裁判所が広く認めること――など。
気候科学者で東京大教授の江守正多さん、哲学者の永井玲衣さん、モデルの小野りりあんさんらも名を連ねた。
世界で増える訴訟 2015年以降顕著に
申立書を提出した気候訴訟ジャパンの日向そよさんによると、連名人には、水害で家族を失ったり、猛暑で作物が育たなかったり、被害を訴える人たちもいるという。「海外では気候変動による人権侵害訴訟で画期的な判決も増えている。国内でも議論してもらうスタート地点に立てれば」と話した。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化が進むことで、猛暑や豪雨などが強まると示している。命を落とす人もいることから、海外を中心に気候変動による人権侵害を訴える訴訟が増えている。
英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究機関が昨年出した報告書によると、昨年5月までに世界で少なくとも約2300件の気候変動に関する訴訟があった。うち3分の2は温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が採択された2015年以降で、訴訟が増えているという。今年4月にはスイスの住民らが、欧州人権裁判所に対してスイス政府の気候変動対策の不十分さを訴えた裁判で、人権侵害が認められた。(市野塊)
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