佐賀県玄海町の3団体が、原発の運転で出る「核のごみ」最終処分場選定に向けた「文献調査」を求める請願を出したことを受け、町議会は17日、原子力対策特別委員会を開いた。国などの担当者を呼んで説明を受けたうえで、特別委は来週にも請願の採択の可否を判断する予定。

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 委員会は町議10人のうち9人が出席し、午前10時に開会。 町旅館組合と町飲食業組合、町内の建設業者11社でつくる町防災対策協議会からそれぞれ出された請願の審査が始まった。

 岩下孝嗣委員長は「エネルギー政策の現状と今後の方向性、高レベル放射性廃棄物の最終処分についてなど、議論を深めたい」と述べ、参考人に説明を求めた。

 参考人として出席したのは、資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構(NUMO)の幹部計4人。同庁の前田博貴・原子力立地政策室長は説明に先立ち、「長年にわたるエネルギー、原子力政策に関する多大なるご理解とご協力について、改めてお礼を申し上げます」と感謝を述べた。

 玄海町には九州電力玄海原発1~4号機(1、2号機は廃炉決定)がある。

 請願はそれぞれ、作業員が町内の旅館や店を利用するといった恩恵を挙げて「国に協力するべき」と訴えたり、能登半島地震などに触れ「立地場所が安全かを再確認するためにも文献調査が必要」と主張したりしている。

 関係者によると、町議会は22日の週にも請願を採決する予定。朝日新聞の取材では、町議10人のうち少なくとも7人は文献調査に賛成の意向で、請願は採択される可能性が高い。

 一方、議会棟前では、開会前から隣の佐賀県唐津市や福岡市などから来た数人が「危険原発と永久処分場」などと書かれたのぼりを掲げた。唐津市の市民団体「玄海原発反対! からつ事務所」代表の北川浩一さん(77)は「原発という重荷を背負いながら、さらに最終処分場の文献調査に手を挙げることは考えられない。絶対反対の意思表示をしないといけないと思って来た」と話した。

 最終処分場選定の最初のステップとなる文献調査を受け入れるかは、市町村長の判断で決まる。脇山伸太郎町長はこれまで、文献調査を受け入れる考えはないと表明してきたが、請願については「町政への貴重なご意見。まずは議会での議論を見守りたい」と述べるにとどめている。

 文献調査は2020年に北海道の寿都町と神恵内村で初めて実施された。(渕沢貴子)

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