米シスコシステムズはサイバーセキュリティー事業を強化分野に位置づけている(米カリフォルニア州の本社)=ロイター

米IT大手のシスコシステムズが日本でサイバーセキュリティー事業を強化する。サイバー攻撃の検知や分析を担当する部署を都内に新設し、政府機関や産業界との連携を担う担当者も置く。サイバー攻撃が増加して手口も高度になるなか、対策の需要が高いと判断した。

シスコのチャック・ロビンス最高経営責任者(CEO)が来日し、政府高官に日本における事業計画を説明した。シスコ日本法人が21日に発表した。

都内で年内に「サイバーセキュリティ・センター・オブ・エクセレンス」を開く。同社のサイバーセキュリティー部門である「シスコ・タロス」の研究者やエンジニアなどを常駐させる。人数については明らかにしていない。連携や助言を担当する「ナショナル・サイバーセキュリティ・アドバイザー」も任命する。

シスコはルーターなどのネットワーク機器が主力だが、サイバーセキュリティーを成長領域とみて事業の強化を急いでいる。2023年9月にはこの分野の有力企業である米スプランクを約280億ドル(約4兆4500億円)で買収すると発表し、3月までに取引を完了させた。

社会のデジタル化の進展や人工知能(AI)の発達などを背景に、サイバー攻撃の被害は拡大している。米国では5月、米ライブネーションが運営するチケット販売サイトが大規模な攻撃を受けて5億6000万人の個人情報が流出したことが明らかになった。国内でもKADOKAWAのサービスが停止に追い込まれている。

一方、企業などの対策が追いついていないのが実情だ。シスコが2月までに約30の国・地域を対象に実施した調査によると、成熟したサイバーセキュリティーの枠組みが整っている組織の割合は5%にとどまった。日本ではこの割合が2%とさらに低く、対応が急務になっている。

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