アマゾンは新興からの人材獲得でAI開発の社内体制を強化する

【シリコンバレー=山田遼太郎】米アマゾン・ドット・コムは28日、人工知能(AI)分野の米スタートアップ企業アデプトの最高経営責任者(CEO)ら複数の幹部がアマゾンに移ると明らかにした。生成AIの基盤技術の開発能力を高める。

テクノロジー大手では米マイクロソフトも3月、米新興企業のインフレクションAIからCEOら主要な社員を引き抜いた。企業そのものを買収せず、人材や技術を手に入れる手法には米欧の競争当局が警戒を強めている。アマゾンとアデプトの関係も当局が調査する可能性がある。

アデプトは米オープンAI出身のデビッド・ルアンCEOらが設立した。細かな指示なしでソフトウエアを使う作業を人間の代わりにこなす「AIエージェント」の開発に取り組んできた。創業2年あまりで企業価値が10億ドル(約1600億円)に達し期待を集めた。

アマゾンは日本経済新聞の取材にアデプトから人材を獲得すると認めた。ルアン氏に加え、共同創業者のうち4人がアマゾンのAI開発組織に加わる。アマゾンはアデプトの技術を使い、対価を支払う。移籍する人数や金銭的条件は明らかにしなかった。

アマゾンは米新興アンソロピックに40億ドルを出資するなど生成AI分野を強化するが、マイクロソフトや米グーグルを追う立場にある。特にAIの基盤となる大規模言語モデルの自社開発で遅れが指摘されていた。アデプトの人材や知見をテコに巻き返しを狙う。

今回の取引にはアデプトの救済という側面もある。

アデプトはベンチャーキャピタル(VC)などから4億ドル以上を調達したが、AIの開発費用がかさみ、事業売却先を探していると5月に報じられた。製品やサービスが完成しないうちに評価が高騰し、事業モデルの見直しを迫られたかたちだ。

米調査会社ピッチブックによるとアデプトには社員が約100人いた。20人以上がアデプトに残り、製品開発を続けるとアマゾンは説明する。社員の大半はアマゾンに移る可能性がある。

当局の監視でテック大手のM&A(合併・買収)は難しくなっている。事実上の買収に近い形で人材を囲い込む手法を当局は警戒する。マイクロソフトとインフレクションAIの関係を巡っては、米連邦取引委員会(FTC)や欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が調査する方針だ。

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