大雨などの災害の後に空き地や道路端へ手当たり次第、山積みに捨てられる災害ごみ。昨秋、計約1700棟が浸水被害に遭った福島県いわき市は、こうした「勝手置き場」問題を解決しようと、地区住民があらかじめ臨時集積所を決めておく制度をつくった。処理費用に国の交付金を充てるための裏技にもなるという。

 同市では昨年9月8日夜、台風13号から変わった熱帯低気圧の影響で線状降水帯が発生。浸水被害が大きかった内郷地区では、翌朝から被災者らが、使えなくなった家具や畳などを私有の空き地や道路端、学校の敷地などに廃棄した。

 市は急きょ9月11日に市民運動場へ仮置き場を開設し、そこへ搬入するよう呼びかけたが間に合わなかった。

 「勝手置き場」の災害ごみは市の委託業者が撤去して回り、仮置き場へ集めたが、分別されていなかったため処分が難航。最終的に仮置き場が片づいたのは今年1月27日になってからだった。「勝手置き場」は同地区内だけで20カ所ほどになったが、撤去しても再び運び込まれたり、他の地区の人が生活ごみを捨てに来たりして、なかなか元通りにならなかったという。市へは、土地をごみの山にされた所有者らからの苦情も入った。

 制度は、おおむね市内に656ある行政区ごとに住民が話し合い臨時集積所を選定して市に登録。災害があった際は、区長ら住民が集積所を開設して分別や警備などの運営を行い、市はこれらをサポートするほか、使われた土地の復旧を担う。

 担当者は「回収業者の手配などで、どうしても仮置き場開設に2日は必要。それまでの間どうするかが課題だった。秩序だった臨時集積所設置と分別で、回収作業や処分が効率化され、結果的に街が早くきれいになる」と説明する。

 これまで「勝手置き場」となった土地の復旧費の多くは市の持ち出しだった。私有地だと国の補助の適用外だからだ。だが、臨時集積所として事前に市に登録してあれば「市が管理する集積所」の扱いとなり、「国の災害等廃棄物処理事業費補助の対象になる」と環境省のお墨付きを得たという。市は「この『裏技』を用いるのは全国初では」と自賛する。

 迫る大雨シーズンに備え、市は浸水被害が想定される371行政区について、優先的に場所の選定を急ぐ考えだ。(西堀岳路)

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