名古屋大学の上川内あづさ教授やマシュー・スー特任助教らは、オスの蚊が同種のメスの羽音を聞き分けることを発見した。蚊をおびき寄せやすい人工音を開発できれば効率的に捕獲して繁殖を減らし、感染症の被害を抑えられる可能性がある。

ネッタイシマカのオス。頭の触角の毛で空気の振動を捉えて音を聞く=名古屋大学の上川内あづさ教授提供

蚊はマラリアやデング熱、日本脳炎などの感染症を媒介する。世界では殺虫剤に耐性を持つ蚊が出現しており、感染症の被害を抑える手法の研究が進む。蚊は聴覚に優れるため、蚊の好む高さの音でおびき寄せて捕らえる方法が考案されている。ただ野外での効果は乏しいのが現状だ。

研究チームはヤブ蚊の仲間であるネッタイシマカとヒトスジシマカについて、蚊が聞く音と行動との関係を調べた。ネッタイシマカのメスの羽音の高さは平均約530ヘルツで、ヒトスジシマカのメスは同約570ヘルツとやや高い音だった。ヒトスジシマカの羽は短いため羽音が高くなる。蚊の飛ぶ速度によっても羽音は変わる。

それぞれの蚊のオスに様々な高さの音を聞かせると、同種のメスの羽音に近い高さの音に最も強く反応し、スピーカーに近づいた。蚊は触角の毛で空気の振動を捉えて音を聞く。毛が強く振動しやすく蚊が聞きやすい音の高さを調べると、ヒトスジシマカはネッタイシマカよりも数十ヘルツ高いと分かった。

東南アジアや北米・南米にはこれらの2種が共存する地域がある。こうした地域にいるオスの蚊は同種のメスを羽音の高さで判別し、交尾の成功につなげている可能性がある。蚊の音の好みを種類ごとに分析して最適な人工音を作り出せば、音による効果的な捕獲法の開発につながるとみている。研究成果は米科学誌「アイサイエンス」に掲載された。

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