記者会見するレゾナックの阿部秀則業務執行役(8日、東京都千代田区)

レゾナック・ホールディングス(HD)は8日、半導体を最終製品に組み立てる後工程の開発や評価に取り組む日米10社の企業連合を設立したと発表した。半導体材料メーカーなどが集まり、後工程の技術開発に向けて米テック大手などとの連携を円滑にする。関連企業が集まるシリコンバレーに開発・評価の拠点を設けることで、情報収集や開発の迅速化につなげる狙いだ。

設立した企業連合「US-JOINT」には、日本からは東京応化工業やTOWAなど6社、米企業は製造装置のKLAなど4社が参画する。シリコンバレーに拠点を設けて開発や評価に必要な装置をそろえ2025年夏ごろの稼働を目指す。投資額は非公表。

先端パッケージと呼ばれる後工程技術の開発を目指し、5〜10年後に実用化されるような新しいパッケージの構造を検証することが目的となる。「GAFAM」をはじめとした米テック企業は半導体の自社開発に力を入れており、契約を結んで研究開発のプロジェクトを進める想定だ。

半導体では回路を形成する前工程での微細化は物理的な限界に近づき、生成AI(人工知能)など向けに複数の半導体チップを組み合わせて高性能化する後工程技術が重要になっている。後工程では組み立ての複雑化に伴い使う材料が増え、ある工程の材料が別の工程で悪影響を及ぼす場合もある。個社だけでの取り組みではなく材料同士の擦り合わせが重要になる。

後工程の重要性が高まるにつれてテック企業や半導体の設計に特化したファブレス企業が自ら後工程の設計や開発をする動きが強まっている。レゾナックの阿部秀則業務執行役は「半導体設計の生まれている場の近くにいることが重要」と話す。顧客に近いシリコンバレーに企業連合の拠点を設けることで情報収集や、素早い開発、提案につなげる狙いだ。

立地やスピード感にこだわるのは、半導体業界では最初に採用された新技術が「デファクトスタンダード(事実上の標準)」になる場合が多いからだ。将来の潮流を押さえることができれば自社製品の採用につながる可能性も高まり、「テック企業などとできるだけ早く会話し、今後どういった材料や装置が求められるかを理解して早く研究開発を進める必要がある」(阿部氏)という。

後工程が半導体の性能に与える影響が大きくなっている

半導体の材料や装置の分野では日本企業の存在感は大きい。レゾナックは後工程向けで世界シェア1〜2位の材料を6つ持つほか、高いシェアを持つ日本企業も多い。後工程での日本企業を含めた連携は加速している。台湾積体電路製造(TSMC)は22年に研究開発拠点を茨城県つくば市に設立し日本の材料メーカーなどと開発を進める。韓国サムスン電子も横浜市に開発拠点を設ける計画のほか、米インテルはオムロンなどと全15社で後工程を自動化する製造技術を日本で共同開発する。

レゾナックは後工程の材料を多く持つ強みをいかし、日本でも企業連合でパッケージ材料を開発・評価する取り組みを18年から始めている。川崎市の開発拠点には顧客が使うのと同等の装置を多く導入。参画企業が半導体メーカーに提案する前段階で技術を磨く練習の場としての機能を果たしている。新たに米国でもオープンイノベーション拠点と連合を設けることで後工程の技術開発で先行したい考えだ。

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