日本の無人探査機「はやぶさ2」が2020年に小惑星リュウグウから持ち帰った試料から、アミノ酸や核酸塩基など生命に欠かせない物質の材料になる65種類もの有機酸を見つけたと、海洋研究開発機構などのチームが10日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ電子版に発表した。
リュウグウのような小惑星が太古の地球に水や生命の材料となる物質をもたらしたとする説がある。今回の発見は、生命誕生へとつながる可能性のある多種多様な有機化合物が小惑星で育まれていたことを示す成果という。
研究チームは、試料の含有成分を熱水で抽出して分析した。試料からはこれまでアミノ酸や核酸塩基が見つかっているが、今回さらに、アミノ酸の材料になる「ピルビン酸」▽核酸塩基の材料になる「リンゴ酸」▽細胞壁のもとになる「メバロン酸」▽エネルギー代謝に必須の「クエン酸」――など65種類の有機酸と、19種類の窒素分子が見つかったという。
リュウグウは、昼は最高100度、夜は氷点下50度にもなり、水は凍結と融解を繰り返す。それに伴い、水に浸された岩石が壊され、細かなすき間ができる。その過程で、水と鉱物と有機物が相互に働き合い、多種多様な有機酸が作り出されたと考えられるという。
チームによると、リュウグウはかつて水に満たされていた。だが、今回見つかった有機酸の一つで、水に接すると構造を変えてしまう「マロン酸」の残存量が少なかった。これはリュウグウが、水と鉱物などの化学反応が比較的進んだ天体であることを示しているという。
チームの高野淑識(よしのり)・上席研究員は「生命の材料であるアミノ酸や核酸塩基を支える巨大な分子群の存在がしっかりと示された。一部は分子進化して生命にたどり着いたと考えられる」と話している。【垂水友里香】
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