探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った砂に、アミノ酸などの材料となる分子が含まれていたと、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などのグループが10日発表した。地球の生命や水が小惑星からもたらされたとする説を補強する成果だという。

 グループは、砂を熱水に浸して抽出する方法で、84種類の分子(有機酸群65種類、窒素分子群19種)が含まれていることを明らかにした。生物の体をつくるのに欠かせないアミノ酸の材料となるピルビン酸のほか、RNAに含まれる核酸塩基の材料となるリンゴ酸もあった。

 これまでの研究で、砂にアミノ酸や核酸塩基が含まれることは分かっていたが、どのようにしてできたかは謎のままだ。今回の研究は、その解明につながるという。

 また、エネルギー代謝に必要なクエン酸や、細胞膜の材料となるメバロン酸も含まれていた。

 JAMSTECの高野淑識(よしのり)・上席研究員は「リュウグウができた太陽系初期の段階で、生命に必要な原材料がすでにあったことを示しており、生命の起源が小惑星から地球にもたらされたとする仮説がさらに補強された」と話す。

 また、マロン酸の比率を、1950年に米国に落下した「マレー隕石(いんせき)」と比べたところ、リュウグウの方がかなり低かった。この分子は水に触れると不安定になる性質があるため、リュウグウが長期間、水や氷で満たされていたことが裏付けられるという。

 高野さんは「地球の水は小惑星から届けられたと考えられてきたが、仮説でしかなかった。証拠として示せたことは大きな意義がある」と話す。

 英科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(https://doi.org/10.1038/s41467-024-49237-6)に論文が掲載された。(佐々木凌)

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