国の天然記念物に指定されている小笠原諸島固有のチョウ「オガサワラシジミ」は、外来種のトカゲなどに脅かされて個体数が急激に減少したため、2016年から環境省や東京都は都内の施設でこのチョウの繁殖事業を本格的に始めましたが、世代をつなぐことができず、2020年を最後に途絶えてしまいました。
兵庫県立大学の中濱直之准教授や、東京大学などの研究チームが飼育記録や残された遺伝情報などをもとに原因を分析した結果、世代を重ねるにつれて遺伝子の多様性を示す指標が低下すると同時に、卵のふ化率やオスの精子の量が急激に減少する傾向があることがわかり、近親交配が繰り返され遺伝的な多様性が失われた結果、繁殖が継続できなかったと結論づけ専門誌に発表しました。
遺伝的多様性を保つためには、繁殖を始める時点でオスとメス合わせて、少なくとも26匹が必要だったと考えられるということで、繁殖事業を成功させるためには、事前に一定の個体数を確保することが重要だったとしています。
中濱さんは「国内でも昆虫だけでなく、脊椎動物や植物までたくさんの生き物がいつ絶滅してもおかしくない状況となっており、今回得られた知見を、ほかの種にも活用したい」と話していました。
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