天然資源に頼っているニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)を人工的に大量生産する技術が確立された。年間4万~5万匹のシラスウナギの生産が可能になる。水産庁と同庁の研究機関「水産研究・教育機構」(横浜市)が発表した。今後民間企業などに技術を提供し、商業化を進める。

日本国内で流通しているウナギのほとんどは、天然のシラスウナギを養鰻(ようまん)場で育てたもの。シラスウナギの国内漁獲量は1980年代以降、低水準が続き、価格は高騰している。また、国内のウナギ流通量(2023年)の約65%が輸入だ。

同機構を中心とした研究グループは、母ウナギから毎週200万粒ほどの受精卵を安定して採取することに成功した。これを水槽に入れてふ化させ、「レプトセファルス」と呼ばれる仔魚(しぎょ)からシラスウナギへ成長させる技術を確立した。


人工的に採取した卵から育てたシラスウナギ(水産研究・教育機構提供)

仔魚が何を食べるのか分かっていなかったが、鶏卵黄などを使った代替飼料を開発。自動的に給餌する装置や大型の専用水槽などを一体化させたシステムをつくり、効率的、安定的にシラスウナギを生産することにめどをつけた。


人工的に採取した卵から育てたニホンウナギ(水産研究・教育機構提供)

シラスウナギ1匹当たりの生産コストは、40127円(16年度)から1821円(23年度)へ下がり、水産庁の担当者は「商業化が視野に入ってきた」と話す。天然のシラスウナギは現在1匹500~600円で取引されており、今後さらなるコストダウンが課題だ。同機構によると、人工的に採取された卵から育てたニホンウナギの味や食感は、天然物と区別がつかないという。

シラスウナギは体長5~6センチ、重さ0.2グラム。日本の河川に生息するニホンウナギは、日本から約2000キロ離れたマリアナ諸島付近へ移動して産卵する。ふ化後に黒潮に乗って北上しながらシラスウナギに成長、日本沿岸に到達する。水産庁によると、ウナギの国内養殖で必要とされるシラスウナギは年間1億匹。

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