災害級の猛暑が続く日本の夏。教育現場では子どもたちの命を守りつつ、学びの場を確保しようと試行錯誤が続く。

 最高気温40度以上を全国で最も多く観測している岐阜県多治見市。市内の小中学校では、熱中症対策として日傘を差しての登下校を推奨している。猛暑日を記録した4日、同市の精華小学校では授業を終えた児童たちが、色とりどりの傘を開いて下校していた。

 林伸彦校長は「子どもたちには暑さに対応していく力を生活習慣の中でつけさせてあげたい」と話す。

 福岡県宗像市の「玄海ゆりの樹幼稚園」では夏を前に、子どもたちにとって、虫捕りや水遊びなどができる成長の場を確保しようと、巨大な日よけを導入した。

 強い日差しが照りつけた3日、園庭では子どもたちが駆け回っていた。頭上を覆う縦25メートル、横30メートルの「メガ・サンシェード」が日差しを和らげ、時折心地よい風が吹き抜ける。

 同園は昨年まで、夏場はほとんど外遊びができない状態が続いていた。「自然とふれ合い、思い切り遊ぶことは、子どもたちの発達にとって不可欠」と、地震や暴風などへの強度計算に2年以上費やし、約4千万円をかけて設置した。

 高杉美稚子教頭は「水分補給や休憩といった対策も行い、安心安全にのびのびと遊べるようにしていきたい」と話す。

 体育館など屋内の運動でも熱中症の危険がある。日本スポーツ振興センターによると、2007~22年度に学校の部活中などに起き、同センターの制度で死亡見舞金が支払われた26件の熱中症死亡事故のうち、6件が屋内で起きている。ただ、体育館への冷房の設置は、費用がかさむため設置率は低い。こうした中、費用を抑えた冷房を設置する動きが広がる。

 山形県立左沢(あてらざわ)高校(大江町)では、今年から体育館に移動式冷房「スポットクーラー」が設置された。練習中に暑さで倒れそうになった経験がある剣道部3年生の小栗初音さん(17)は「これなら簡単に涼を取ることができる」と喜ぶ。

 同県は今年、42の全公立高校の体育館や武道場にスポットクーラーを設置した。昨年7月に米沢市で部活帰りの女子中学生が熱中症とみられる症状で倒れ、亡くなったことなどを受けた対策だ。

 県によると、かかった費用は1台につき約100万円。担当者は「導入は抜本的な対応ではないが、まずはできることから」と話している。(溝脇正、小宮健、友永翔大)

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