記者会見で説明する理化学研究所の北島智也チームリーダーら(東京都千代田区)

理化学研究所の北島智也チームリーダーらは加齢によって卵子の染色体数に異常が起きやすくなる仕組みをマウスで明らかにした。細胞分裂の過程に乱れが生じていた。染色体数の異常による流産や先天的な病気の解明につながる。成果をまとめた論文は米科学誌「サイエンス」に掲載された。

卵巣には卵子のもととなる卵母細胞があり、排卵後に両親から受け継いだ染色体を半分ずつに分配する「減数分裂」を起こす。卵母細胞の染色体は卵子の4倍あり、2回の減数分裂を経て卵子に成熟する。

細胞分裂時に作られる紡錘体という構造の中に配置された染色体は、適切な時期に2つの細胞へ均等に分配される必要がある。正常に分配できないと不妊や流産、ダウン症などの要因になる。これまで、加齢とともに卵子の染色体の数が異常になる頻度が高まることが知られていた。特に大きさが小さい染色体ほど発生頻度が高い傾向にあったが、詳細な仕組みは分かっていなかった。

マウスの卵母細胞にある染色体(赤い部分)の顕微鏡画像=理化学研究所提供

研究チームはマウスが持つ20種の染色体をそれぞれ識別して細胞内で移動する様子を観察する技術を開発した。人間の40歳に相当する生後16カ月のマウスの卵母細胞を対象に、減数分裂時に各染色体がどのように移動するか調べた。

その結果、1回目の減数分裂の際に小さな染色体が本来よりも早い時期に分配されやすいことを見つけた。適切な時期に染色体が分離されないことで、同じ染色体が3つになったり、逆に1つになったりする異常につながっていた。

小さな染色体は紡錘体の中心部に集まる性質があることも突き止めた。中心部は強い張力が発生する場所で、人工的に小さな染色体を中心部から遠ざける処理をしたところ、早期分離が起きる頻度が低下した。

北島氏は「染色体の分配異常が起きる仕組みはほとんど分かっていなかったが、今回の研究により、重要な一歩を踏み出せた」と話す。研究チームはヒトでも同じ現象が起きると考えており、霊長類やヒトの細胞などの研究も進めていく考えだ。

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