文部科学省の有識者会議は19日、米国で新しく始まる素粒子実験に参加する基本方針をまとめた。素粒子は物質やエネルギーの最小単位で、実験には大規模な施設が必要になる。日本側の費用負担は2050年までに総額約280億円を見込む。未知の物理法則を探索する。成果は核融合発電や量子技術に応用できる可能性もある。
日本が参加するのは米エネルギー省傘下のブルックヘブン国立研究所(BNL、ニューヨーク州)内に建設が計画されている円形加速器「EIC」の計画だ。現行の加速器「RHIC」を改良するもので、2026年に着工し、34年の本格運転開始を予定する。
EIC計画の建設費は現時点で総額17億〜28億ドル(約2700億〜4500億円)とされる。文科省は有識者会議で日本側の費用負担の概算を示した。日本は測定機器などの建設費で約42億円を負担する。人件費などの運用費として建設期の25〜30年は年約8億円、運用期に入る31〜50年は年約10億円を見込む。
日本は理化学研究所と東京大学、大阪大学が中心となって連携体制を整備し、理研や大学は役割に応じて費用を分担して計画に参加する。有識者会議の委員らは巨額の費用について妥当な規模であるとの見解を示す一方、他の研究計画に支障が出ないことや産業界との連携、国民の理解を得るための取り組みなどを求める意見も出た。
EIC計画では加速させた電子と原子核などを衝突させる。原子核には陽子などの粒子が含まれており、分裂して飛び出す。その素粒子の種類や飛び方を詳細に観察することで、未知の物理法則を探索する。
原子核分野の研究は他分野の科学や産業への貢献も期待されている。原子核同士を融合させたときに発生するエネルギーを発電に利用する「核融合発電」や、量子コンピューターなどの量子技術の開発につながるという。
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