アルコールを代謝する過程でできるアルデヒドが、遺伝子を傷つけていた=名古屋大学の荻朋男教授提供

名古屋大学の荻朋男教授らは、二日酔いに関わる遺伝子が老化にも関与することを見つけた。アルコールを代謝する過程でできる有害物質「アルデヒド」の分解に関わる遺伝子で、働きが弱まるとDNAに傷が入りやすくなっていた。早期の老化を引き起こす早老症の治療法開発に役立つ可能性がある。

アルコールに対する強さは複数の遺伝子の働きが左右する。なかでもアルコールが体の中で分解される過程で生じるアルデヒドは毒性があり、分解に関わる2種類の遺伝子の働きが弱いと二日酔いになりやすい。

これらの遺伝子が働かないマウスは早老症を伴う遺伝病になることがこれまで分かっていたが、詳しい仕組みが分かっていなかった。荻教授らが培養した細胞にアルデヒドを与えて分析すると、細胞の増殖や形の維持を担う遺伝子などに傷が入っていた。

そこで、マウスを使って傷の修復に役立つ遺伝子とアルデヒドを分解する2種類の遺伝子を働かなくしてみたところ、成長障害や短命といった症状が表れた。分解されずに残ったアルデヒドでDNAが激しく傷付いて修復されなくなった。新しい細胞を生み出す幹細胞が減って臓器や組織の働きが正常に保てなくなり、老化が促されるという。

日本人の4割程度は両親から受け継いだアルデヒド分解に関わる2つの遺伝子の片方に変異を持っており、アルデヒドの分解能力が低く、アルコールに弱い。荻教授は「飲酒が直接的に老化を促進するかは検証が必要だが、早老症の治療薬開発などにつなげたい」と話す。研究成果は英科学誌「ネイチャー・セルバイオロジー」に掲載された。

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