東京海洋大学は24日、水素燃料電池と蓄電池のみで運航する船として国内で初めて、船舶の実用化に重要な検査証を得たと発表した。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の会場では、同じ技術を用いた船の運航が計画されている。水素燃料船の普及につなげ、従来船舶から排出される温暖化ガス(GHG)の削減をめざす。
東京海洋大は2010年から、実験船「らいちょう」シリーズを開発しており、今回、検査証を得た「らいちょうN」(14年に建造)は3番目の船にあたる。最大搭載人数は12人で、重さは約9トン。船舶の長さは12.6メートルだ。水素燃料電池を動力源とし、運航中に二酸化炭素(CO2)を排出しない。
船舶の検査を担った日本小型船舶検査機構から4日付で船舶検査証書を交付された。自動車における車検に相当するとされ、船を実証レベルではなく、実用化で建造・運航をするのに重要となる。
証書の交付を受けるには、国土交通省が定める水素燃料船に関するガイドラインを満たす必要がある。水素は爆発しやすく、取り扱うのに危険を伴う。東京海洋大は約2年かけて、水素が漏れた場合の安全対策や制御の仕組みなどを確立し、求められる要件に対応した。
東京海洋大の技術提供や支援を受けて、岩谷産業が万博で水素燃料船の旅客運航を計画する。大型船向けの検査証を別途、取得する必要があるが、今回のらいちょうNの実績で道筋がついた。
らいちょうNの研究開発を手掛ける東京海洋大の大出剛特任教授は、「水素燃料船が普及できる門戸を開けた」と話した。海水温が高い環境でも船の性能を維持できるようにするため、今後のらいちょうNで夏場の運航データの取得を目指す。
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