人工知能(AI)など最新テクノロジーの潜在力と課題を議論する「GDS2024世界デジタルサミット」(日本経済新聞社主催)が1日開幕した。講演した米スタンフォード大学のアンドリュー・ング兼任教授はアプリ開発に生成AIを活用することで「ソフトウエア開発の文化が変わりつつある」と語った。
米オープンAIが2022年11月に公開した対話型AI「Chat(チャット)GPT」は人間のような巧みな受け答えで世界に衝撃を与えた。産業界では生成AIを業務の効率化に役立てる動きが急拡大している。AI研究を長年リードしてきたング氏は「今後10年は生成AIの時代になる」と強調した。
ング氏が特に注目するのがソフト開発分野だ。生成AIをデータ分析やプログラミングに活用すれば「従来半年かかっていたアプリ開発が1週間でできる」という。「企業はアイデアをすべて実装して試せる。参入障壁が下がり、ソフト開発の文化自体が変わっている」と語った。
人手不足や生産性向上の切り札と期待を集める一方で、生成AIは事実と異なる回答をする「ハルシネーション(幻覚)」など技術的な課題を抱えている。自由に改変して使えるオープンソースのAIモデルがサイバー攻撃や偽情報の拡散に悪用されるリスクもある。
ング氏はAIの安全性をめぐる議論について「(米オープンAIなどが開発する)AIモデルのような技術自体を規制するのではなく、AIモデルを実装するアプリごとにリスクをみてガバナンスをすべきだ」と主張した。オープンソースについては「最新のAIにアクセスできるよう(仕組みを)守ることが日本企業にとっても重要だ」と述べた。
続いて講演したNTTの島田明社長は「日本の社会変革には、様々なAIが連携する連鎖型AIに変える必要がある」と訴えた。業務や業界別に導入されているAIを連携させれば導入効果を最大化できると述べ、連鎖型AIの推進に向けて月内にコンサルティングの新会社を設立する考えも示した。
GDS2024は「人間社会を豊かにするテクノロジーの在り方とは何か、考え伝えていく」をテーマに、先端技術が社会の仕組みを変革する可能性や課題を議論する。会期は2日まで。
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