24年4〜6月期のデジタルヘルス分野への投資額は減り、投資件数は四半期としては14年以降で最も少ない水準にとどまった。
この分野の低迷を受け、投資家は成熟企業への集中投資に重点を移している。一方、アーリーステージ(初期)企業への投資意欲は落ち込んでいる。
24年4〜6月期のデジタルヘルス分野の状況についての概要を以下に示した。
・世界のデジタルヘルス分野のスタートアップによる資金調達額は前四半期比26%減の29億ドルにとどまった。調達件数は235件と、四半期としては14年以降で最も少なかった。もっとも、24年に入ってからの1回の平均調達額は1670万ドルと23年通年から40%増えており、投資家が対象を厳選し、集中的に資金を投じていることを示している。
・米企業による案件の割合は61%と、前四半期の54%から上昇した。24年4〜6月期の米国の調達額は前四半期比18%減ったが、ミッドステージとレイトステージの案件の割合が高まり、世界全体に占める米国の割合も上昇した。24年に入ってからの米企業の1回の調達の中央値も750万ドルと、23年通年の460万ドルから増えている。
・24年に入ってからのミッドステージの案件の割合は26%に急上昇した一方、アーリーステージは14ポイント低下している。アーリーステージの案件はここ数年、全体の6割前後で推移してきた。だが24年に入ってからは投資家の関心がミッド・レイトステージに移り、アーリーステージの割合は51%に低下している。米国では24年のアーリーステージの割合は45%と、23年通年の62%から下がっている。
・1回の調達額が1億ドル以上のメガラウンドは減少したが、様々なカテゴリーに広がっている。24年4〜6月期のデジタルヘルス分野のメガラウンドは5件と、前四半期の8件から減少した。メガラウンドは1〜3月期には「バイオテック」に集中していたが、4〜6月期には「Web問診」「超音波技術」「(費用対効果など)価値に基づく医療のツール」などに及んだ。4〜6月期の最大のラウンド(調達額2億ドル、シリーズD)は、オンラインの栄養指導により慢性疾患を管理する米フードスマート(Foodsmart)だった。
・デジタルヘルス分野のエグジット(資金回収)は32件と、前四半期の26件から増えた。人工知能(AI)搭載プラットフォームのエグジットが目立ち、米テンパスAI(Tempus AI、精密医療)と中国の晶泰科技(XtalPi、AI創薬)が新規株式公開(IPO)により、イスラエルのヌーボー・グループ(Nuvo Group、胎児の心拍の遠隔モニタリング)が特別買収目的会社(SPAC)経由でそれぞれ上場した。M&A(合併・買収)によるエグジットも前四半期の5件から、欧州を中心に10件に増えた。M&Aの主なカテゴリーは「遠隔診療」「医療従事者向け業務フローツール」「創薬プラットフォーム」だった。
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