「日本は『がまんの省エネ』を続けてきた社会ですが、欧州では暑さ寒さをがまんすることは人権侵害と呼ばれます」

 7月26日配信の記事「官僚たちの夏『暑くて仕事にならない』冷房下げられない霞が関の事情」に、国際NGO職員の経験があるノンフィクションライターの高橋真樹(まさき)さんは、こうコメントした。

 記事では、35度以上の猛暑日が相次ぐ中、温暖化対策で「室温28度程度」に設定された東京の中央省庁の官僚から不満の声が出ていることを紹介。全館空調などのため、暑くても冷房のこまめな調整ができず、日当たりや階層などによっては室温が30度を超えることもある現状を伝えた。

 コメントで、高橋さんは「職場の温度については労働安全衛生法で『18度以上28度以下になるよう努めなければならない』と定められています」と紹介。「28度以下というのは、エアコンの設定温度ではなく、室温です。法律を守るべき行政が、自らこの規定を守っていないことは重大な問題ではないでしょうか」と批判した。

 そのうえで、高橋さんは「この問題はエアコンの設定温度を下げれば解決するというわけではありません。霞が関に限らず、日本の建物の断熱・気密性能は極めて貧弱です」と指摘した。

 断熱に関する著書があり、みずからエコハウスでの暮らしを実践している高橋さん。日射遮蔽(しゃへい)の対策と断熱工事を行うだけでエアコンの利きは改善するとして、「室内環境を快適にすることと光熱費を下げることは、どちらか一つしか選べないのではなく、両立できるのです。それが気候変動対策になることは言うまでもありません」と説いた。

 そして、この暑さは一過性の「異常気象」ではなく今後さらにエスカレートしていくとの見方を示した上で、コメントの最後を次のように結んだ。

 「クールビズやエアコン28度設定などの表面的な『やっているフリ』ではなく、根本的な断熱対策に行政が率先して取り組むべきです」

 この記事や、高橋さんのコメント全文はこちらから(http://t.asahi.com/wo26)。同じ記事には、よろず物書き業のマライ・メントラインさん、法政大学教授の上西充子さんらもコメントしています。

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